コーダ あいのうたのレビュー・感想・評価
全715件中、361~380件目を表示
フィクションが描く鮮やかさと限界
コーダである主人公の彼女の物語としては、感動的。
上映中、何度も涙した。
終映直後の快感のあとに残ったのは、主人公の周りにいたひとびとの存在…
主人公の父は、母は、兄は、恋人は、一体どんな葛藤を抱えていたのだろう?
主人公の葛藤は、コーダの少女の生きざまが見事に描かれていたように思う。
一方で、主人公の夢を送り出す、周りのひとびとの葛藤については解像度が粗く、一見めでたしめでたしのようだが、モヤモヤが残る。
性生活を主人公である娘にオープンな両親、マリファナを吸う父、娘の都合を鑑みずに何度も手話通訳を頼む母、キレやすい兄。
学校のクラスメイトたちの主人公へのいじめ紛いないじり、疲れ切っている彼女の居眠りへの教師の嫌味、学校全体の彼女への差別的な空気、家庭環境が良いとは言えない恋人(ここは気になったが、あまり描かれていない)。
ろう者であるとか障碍の以前に、全体的に難ありな環境下にいる主人公。
そんな状況の中、主人公だけが清潔に描かれる。
家族の通訳を生まれてからずっと担い続け、家業の漁もし、自分の学校生活や私生活の多くを犠牲にして、ろう者である家族のために尽くす娘。
そんな悲惨な状況にある彼女には、歌の才能がある。
障碍を才能で乗りこえるパターンの物語をみると、いつもなんだかな〜という気持ちになってしまう。
GO!
愛さえあれば
ルビー良い子
ワンダフル!
エミリアジョーンズの演技が素晴らしい
作品自体とても面白かった。家族で唯一の健聴者で昔から家族を支えないといけないという使命にかられるルビー。そんなルビーには歌唱の才能があり、本人も歌うのが好きだった為、バークリー音楽大学に進学したいと思い両親に話すが、彼らは音が聴こえないし、自分達の生活上唯一の健聴者であるルビーを遠くに行かせたくないことから大学進学には否定的だった。
自分がいないと家族はうまく生活できなくなってしまうが、自分の好きな事をもっと学ぶために進学することを諦めたくないというルビーの葛藤を女優のエミリアジョーンズがうまく表現していると思った。
学校のコンサートでルビーとマイルズのデュエットをあえて途中から無音で表現する事で、聴覚障害のルビーの家族の視点から見せるなどの映像表現法もいいと思った。
とにかく明るい家族が魅力的
障害があってもやたら明るく、貧乏でも元気に生活してる家族がチャーミング。(聞こえないから生活が騒音だらけというのも目から鱗だった。そういうさりげない描写がユーモラスに積み重なって映画の魅力になっている)
とはいえ、ほかの人たちとコミュニケーションがとりにくいこと、貧しいことは解決しているわけではないのでちょっとした躓きでたちまち困ったことになる。トラブルが起きると、一人だけ健聴者のルビーにしわ寄せが来ていることが露わになる。(そもそも家業の手伝いで学校では居眠り、同級生からはいじめの対象で、本人も色々自信がもてないでいる)
聞こえる聞こえないで家族の間にも相容れないことがあり、どこまで理解し寄り添えるかは個人差があり、この家族の中では実は美人母が浮いてるが、家族愛ゆえ後半まで誰も真正面からぶつかることはない。(気持ちを母娘で吐露するシーン、家族の犠牲になるなと兄が感情をぶつけるシーンは、ぐっと来る)
特殊な家庭で育ったルビーが歌を通して自分を見つけていく過程もすばらしいが、なんといっても父親の内面から世界を見たシーンの素晴らしいこと。絶望的に理解できないはずなのに、それでも娘の味方であろうと歩み寄る姿。
それに応えるように試験会場で聞こえない家族にも自分の歌を届けるルビー。探していた自分を見つけたことに、見ている方も暖かい気持ちになる。
(家族の物語はどのシークエンスもステキだが、その分組合やら入試やらが安直に進んでるように思えるので、残念ながらそこはマイナスです)
ユーモアと泣き笑いの感動作
聾唖者の家族の中で唯一の健聴者である17歳のルビーは早朝3時に起きて父と兄の漁を手伝い、漁を終えて学校へ通う毎日。
そりゃ授業中に居眠りもするし、服は魚臭かったりするさ。
いじめや障害に対する偏見の中、自分だけの秘密の場所で歌う事が唯一の楽しみ。
合唱指導の教師にその才能を見出されるまではバークリー音楽大学の存在すら知らなかった。
漁を終えて学校へ向かおうとする娘に父が「今日は病院の日だから忘れるなよ」と手話で伝える。
始まってすぐ、えっ、この環境で誰かが病気なんて可哀想すぎる。と思ったら、なんとそこは父の泌尿器科。
感情たっぷり症状を説明する父、『性病です』と病名を説明する医師、その通訳は娘。
普通の女子高生はまず経験しない日常。
声を出して笑ってしまうシーンには必ず父がいる。
この、無骨なお父ちゃんがめちゃくちゃいいのです。
演じるトロイ・コッツァーは今年度アカデミーの助演男優賞にノミネートされいる。
彼は同じ聾唖のマーリー・マトリンの『愛は静けさの中に』での演技に憧れて俳優を志したのだそう。
『愛は静けさの中に』を当時劇場で観た私としても嬉しいエピソードだ。
ホントに当時のマーリーの演技は美しくてどこか荘厳ささえ感じた。
そのマーリーと夫婦役を演じるなんて、トロイにとっては夢のようだっただろうな。
歌う事が大好きなのに、その喜びも自分の歌声も両親には伝えられない。
自分がいなければ家業も続けられない。
初めて見つけた自分の夢と家族の生活の狭間に悩み苦しむルビー。
終盤の数分間の無音の時間。
音のない静寂の時間が、この映画の全てを物語っている。
最高に楽しくて切なくて、愛が詰まった作品。
感涙ポイントが何度もやってくるので鑑賞の際はティッシュ必須ですのでご注意を。
映画としては中の中
映画は総合芸術、弱者を扱った映画だからといって、評価を甘くする気はない。
高評価としなかった大きなポイントは、物語に"現代の要素"を感じなかった点がちょっと残念に感じた。
作中の各エピソードが10年、20年、50年前でも書けた展開ではなかろうか…と。
具体的に言えば、若いカップルが湖泳いで急接近…って展開、今時古いでしょ!
噂の広まりによる主人公のいじめ…という展開も、現代ならSNSで広まるのが常識、それが"学校の食堂"ってこれもまた古い…
勿論、誉め所も有ります!
各役者の芝居は実際に聾唖者が演じているので違和感無くて素晴らしい、特に父親役の方!、助演男優賞候補(やはり受賞!)も納得。
後から知ったのですが、母親役は「愛は静けさの中に」の方でしたか~
あと、どーでも良いツッコミ所ですが、商売道具である船を売るとか言う前に、まず2台持ちの車かバイクの売却でしょ!
ちなみに、「エール!」はまだ観てないので観てみます。
初めて知った「Coda」という言葉
「Child of Deaf Adults」の略語、
ろう者の親をもつ子供とのことを指す言葉だそうだ。
半世紀生きてて知らなかった。
観に行く前は音楽記号のcodaと思い込んでいた。
というわけで全くの予備知識なしに観た。
主人公の家庭描写が自然で
日々の営みが、違和感なく入ってきて、
ろう者を家族に持つことが、
日常で少し不便だけれど、
普通のこととして
一つと個性として受け入れられた。
興味深かったのは、彼ら家族を
健聴者と違うだけで、少し避けたり
軽く虐める側にこそ違和感を感じたことだ。
そういうことをする人達がむしろ
妙に不自由に見えた。
物語を動かしていくのは、
ろう者であることを当然とし
良い意味で気にしない人々、
家族の中で唯一の健聴者の主人公が
明るく家族をサポートする様を
眩しく観ていた人だ。
はからずも、2022年2月、3月あたりで
テレビドラマにおいても、
ろう者の人たち、LGBTの人たち
突然の病気で、夢破れた人が登場する。
時代は行きつ戻りつつしながら
少しずつ前へ進んでいるのかもしれないな
とこの映画を観て思った。
今、是非観てもらいたい映画です。
正直、感動した
悪い人はいないので救われました。
脚本だけ見るとちょっとチープだけど、娘の成長と歌の楽しさ、そこに魅せられたかと思うと、娘の歌声が全く聴こえない聾体験に胸を打たれました。
娘の歌が自身には聞こえないにも関わらず周囲の人の喜びや、ノリノリになる人、泣いてさえいる人がいるような状況に疎外感を感じてしまう父はじめ世の聾唖者に感情移入させられて「何ということか、こんなに楽しく美しい響きさえ楽しめない状態なのか」とやるせ無さに打ち肘がれました。
しっかりと娘、兄、両親が救われるので視聴者も救われます。
唯一マイルスはちょっと残念だったけどね。
エミリア・ジョーンズがいい!
音楽を信じるということ
振り返らずに
全715件中、361~380件目を表示