「愛と人生を両側から見る話」コーダ あいのうた ゆっこさんの映画レビュー(感想・評価)
愛と人生を両側から見る話
はじめは両親のルビーに対する扱いにもやっとした、特に母親
本人には深刻な悩みなのに"反抗期"とか軽く笑われて扱われることに、無理解を感じて
一度大学行くのやめるって決めた時も、その決断下した娘に感謝してほめるんだ?と思って
途中まではこの関係は依存であり自己犠牲であり、パワーバランスが崩れててルビーばかりが背負ってるように見えた
でも後半の合唱の発表から見え方が変わる
ルビーの歌声が聴こえず無音のままの数分間、私達は家族と同じ立場で会場を眺める
その時初めてわからないとはこういうことなんだと知る
せっかく歌ってるのに今日のご飯の話をしているのも、仕方ない
何が起きてるかわからず立ち続けてる娘を見続けるのはなかなか難しいことだから
両親はルビーのドレスなど視覚的なものばかりをほめることも
だけど周りで泣いてる人がいる、周りからの視覚情報でしかルビーの歌を感じとれない
けれどそこから、父親が初めて娘の歌を真剣に全力で聴こうとする姿に泣いてしまった
わからなければ知らなければ、興味を持つこともその価値を知ることも困難だ、それは私達だって他の事に関してきっとそうだ
それでも身体すべて使ってルビーの歌を聴いたのは愛で
ろう者でしかわからないことがある
出来ないことは山ほどあるけど、いつだって誰かに助けてもらう立場でいることはきっと苦しいし、本当は自分達だけの力で立ちたい
オーディションで手話しながら歌う姿で、歌った曲の歌詞で、あぁルビーはけしてただ犠牲になってたわけじゃないんだとわかる
大変だけど漁での日々は楽しかったし、家族に伝えようとすることで彼女の歌がのびのびと届いていったし、家族を本当に愛していて力になりたい気持ちも本当で、どちらかが犠牲になったとかではなく与えもらい合う関係だった
頼りすぎてはだめだ、でも支え合うことで成り立ってた
きっとお互いがお互いじゃなければよかったなんて一ミリもないんだろう
お互いがお互いだから今この生き方をしてるんだろうと思わせてくれる
面倒で愛しくて楽しい、家族の愛が描かれてた