劇場公開日 2022年1月21日

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「『サウンド・オブ・メタル』と併せて観たい一作。」コーダ あいのうた yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5『サウンド・オブ・メタル』と併せて観たい一作。

2022年1月27日
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鑑賞方法:映画館

絆の深い家族だからこそ、胸に刺さるような一言を発することもある、それを痛切に理解させてくれる一作。

才能ある若者が、優れた指導者に見出されて未来を切り拓く。そんな物語はこれまで多く作られてきたけど、本作の主人公ルビーの持つ歌唱力という長所を、耳の聞こえない彼女の家族は直接体験することができません。そのもどかしさを抱きつつ、それぞれがどのように人生の決断をしていくのかが丁寧に描かれます。

漁業を営むルビーの家族は、時にかなりの憎まれ口を(手話で)叩くものの、深い愛情と絆で結ばれていることが、仕草の端々に伝わってきます。その一方で、漁船には必ず聴者が一人乗り込まなければならないという規則、そして仕事上の交渉の際に手話通訳が必要、といった現実上の要請もあり、学業と仕事の両方をルビーに背負わせざるを得ない状況にあります。さらに子どもを手放したくないという愛情、そして彼女の才能を理解してやれないという苛立ちがないまぜになって、ルビーが音楽の道に進みたい、という願いにも簡単には同意しません。諍いの時に交わされる言葉は、それが偽りのない心情に裏打ちされていることが分かるだけに、一層鮮烈です。

ルビーの家族を演じた3人の俳優はもちろん、本作のために手話を猛練習したというエミリア・ジョーンズの演技は素晴らしく、本当に家族のようです。彼女の才能を見出す音楽教師を演じるエウヘニオ・デルベスは、出身の設定からして彼そのもので、エキセントリックな指導場面を非常に生き生きと演じていました。一生懸命覚えたと思われる手話で対話する下りは、短いけど爆笑。

最初は軽薄に見えていたルビーの兄が、父と共に逆境を跳ね返していく姿は頼もしく、ルビーを産んだ時を回想する母の言葉の重さは深く胸に突き刺さります。そして終盤の、音にかかわるある演出に、『サウンド・オブ・メタル』を思い起こし、スクリーンを通してだけど、彼らの中に”入り込んだ”ような気がしました。

yui
yuiさんのコメント
2022年10月25日

コメントありがとうございます!言葉で表現し切れなくても想いは伝えられる、という映画のメッセージ通り、感動を共有できるだけでも素晴らしいことだと思います!

yui
Mさんのコメント
2022年10月25日

「あのシーン」ではほんとに感動しました。(と月並みな表現しかできない自分がもどかしい)

M