劇場公開日 2022年1月21日

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「オリジナル版を意識しつつ独自の設定を散りばめることで繊細な人物描写を実現した!!」コーダ あいのうた バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0オリジナル版を意識しつつ独自の設定を散りばめることで繊細な人物描写を実現した!!

2022年1月20日
PCから投稿

フランス映画『エール!』のアメリカリメイク作品。

大まかなプロットや演出などは、似た部分も多く、セリフに関してもそのまま使用しているものも多い。

恋愛要素が追加されていたり、楽曲はアメリカで親しまれている曲に変更されていたり、細かい設定などが変更されている。

細かい部分でいえば、例えばオリジナル版では農場という設定だったが、今作では漁師という設定に変更されているし、音楽教師の個性が強調されていて、既婚者になっている。弟ではなく兄がいる設定など、随所にオリジナル設定が散りばめられている。

実際に聴覚障害のある俳優をキャスティングしていった結果として、オリジナル版と似た俳優になっているのは奇跡といえるだろう。

設定を漁師にしたことで、健聴者が船に同乗しないといけない状況をより具体的に作り、家族が依存しているという環境を強調しているのと同時に、ルビーも家族を手伝うことで、ひとりだけ健聴者であることへの疎外感を埋めていることも描いていて、互いに依存し合う関係性が強固なものとなっている様子が、オリジナル版よりも凄く感じられた。

自分の歌声に対して、可能性を見出していくことが、結果的に家族と孤立してしまうことになる。

理想と現実の絶妙な距離感、一番歌声を聴いてほしい家族に聴いてもらうことのもどかしさの中で、どう歌を伝えるのか、そしてそれが家族にどう伝わるかの描き方は、オリジナル版に沿っていながらも、ストーリーを通して今作独自に繊細に描いてきた結果的要素が加わり、見事なまでの完成形となった。

ルビー役のエミリア・ジョーンズの歌唱力も大きな役割を果たしていて、ちゃんと才能があると感じさせる説得力には感心するのみだ。

バフィー吉川(Buffys Movie)