「誠実だった主人公が、救世主として振る舞い独裁者に変貌していく姿にリアリティを感じ、恐さを覚えた」デューン 砂の惑星 PART2 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
誠実だった主人公が、救世主として振る舞い独裁者に変貌していく姿にリアリティを感じ、恐さを覚えた
ドゥニ・ビルヌーブ 監督による2024年製作(166分/G)のアメリカ映画。
原題:Dune: Part Two、配給:ワーナー・ブラザース映画、
劇場公開日:2024年3月15日。
未読だが原作は、フランク・ハーバートにより1965年に執筆された『デューン 砂の惑星』とのこと。古典とも言えそうだが、現実に独裁者により戦争が起きている今、同時代性を感じさせられた。時代に合わせて、ヒロイン・チャニ(ゼンデイヤ)のキャラクターもかなり変えられているらしく、主人公ポール(ティモシー・シャラメ)の独裁者への変貌に反発する彼女の感性に共感も覚えた。
数千年後の地球外惑星が舞台というSF映画ということなのだが、剣による決闘や肉弾戦も登場し、まるで古代の戦争映画の様で不思議な感じ。とは言え、強大な香料採掘用の重機や翼を羽ばたかせて飛行する航空機も登場しての戦いの映像は、派手な爆破シーンも満載でなかなかの迫力であった。
映像的には、やはり砂漠の中の巨大砂虫サンドワームの上にティモシー・シャラメが乗って、砂漠を猛スピードで突き進め映像には感心させられた。サンドワームの造形(デザインはパトリス・バーメットらしい)も流石と思ったが、サンドワーム幼虫を素手で掴んで水中で溺死させ、青い体液を「命の水」として採取する映像のリアリティ感にも、いたく驚かされた。
前作でもそうだが、今回も主人公ポールが夢として見る未来映像、今は未だ母のお腹の中にいる妹の未来の姿や悲惨な全面戦争画像も含めて、「メッセージ」の夢映像で感動させられたビルヌーブ監督らしく、何処かノスタルジックで艶かしく、とても素敵であった。
主人公の母(レベッカ・ファーガソン)が、砂漠の民たちが有する救世主神話をしっかりと利用して、自分及び息子の立場や権力を築いていくという物語展開が、現実の世界の権力と重なる毒を含んでおり、怖く感じた。そして、何より誠実だった主人公ティモシー・シャラメが、周りの状況もあったが救世主として振る舞い、皇女(フローレンス・ピュー、衣装も含めて実に魅力的)に政略的結婚を持ちかける独裁者に変貌していく姿に驚かされ、ついてていけないものを感じた。同時に、現実の独裁者の誕生ももしかするとこういう感じなのか、と新たに気付かされた側面もあり、なかなかに怖くて深い映画だと感じた。
最後、主人公と別れたヒロイン・ゼンデイヤが砂虫を呼ぶ決意を感じさせるカッコよい映像もあり、Part 3への期待も大。
監督ドゥニ・ビルヌーブ、製作メアリー・ペアレント 、ケイル・ボイター 、パトリック・マコーミック 、タニヤ・ラポワンテ 、ドゥニ・ビルヌーブ、製作総指揮ジョシュア・グローデ ジョン・スパイツ 、トーマス・タル 、ハーバート・W・ゲインズ 、ブライアン・ハーバー、ト バイロン・メリット 、キム・ハーバート 、リチャード・P・ルビンスタイン 、ジョン・ハリソン、原作フランク・ハーバート、脚本ドゥニ・ビルヌーブ 、ジョン・スパイツ、
撮影グレイグ・フレイザー、美術パトリス・バーメット、衣装ジャクリーン・ウェスト、
編集ジョー・ウォーカー、音楽ハンス・ジマー、視覚効果監修ポール・ランバート。
出演
ティモシー・シャラメポール・アトレイデス、ゼンデイヤチャニ、レベッカ・ファーガソンレディ・ジェシカ、ジョシュ・ブローリンガーニイ・ハレック、オースティン・バトラーフェイド=ラウサ・ハルコンネン、フローレンス・ピュー皇女イルーラン、デイブ・バウティスタラッバーン・ハルコンネン、クリストファー・ウォーケンパーディシャー皇帝シャッダム4世、レア・セドゥレディ・マーゴット・フェンリング、スエイラ・ヤクーブシシャクリ、
ステラン・スカルスガルドウラディミール・ハルコンネン男爵、シャーロット・ランプリング教母ガイウス・ヘレネ・モヒアム、ハビエル・バルデムスティルガー、
アニヤ・テイラー=ジョイ。