「多幸感と爽快感と少しの笑いで心地良くなる映画」ゴヤの名画と優しい泥棒 カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
多幸感と爽快感と少しの笑いで心地良くなる映画
「ノッティングヒルの恋人」のロジャー・ミッシェル監督の少し笑える実話を元にしたハートウォーミングな物語。
主演のジム・ブロードベントが高齢にも関わらず膨大なセリフ量をこなし、妻役のヘレン・ミレンと共に皮肉とイングリッシュジョークを交えた軽妙な掛け合いが楽しく、ずっと見ていたいと思った。
ヘレン・ミレンは「ワイルドスピード」で見せた背筋をピント張った若々しい悪女の雰囲気とは打って変わり市井の老婦人を年相応に演じており、その落差に驚きつつもアカデミー女優の奥行きの深さを見せつけられた気がした。
後半の舞台はほとんど法廷になるが、ジム・ブロードベントのジョークを交えたワンマンショーのような被告人答弁で傍聴人だけでなく陪審員や裁判官も堪えきれずに吹き出してしまうシーンは最高に楽しかった。
一見やる気がなさそうだが実は凄腕の人情派弁護士役を演じたマシュー・グードもギャップ萌えが強烈で、陪審員はじめ法廷全てを味方につけるように被告人から多くはないが心に響く回答を引き出し、出番が少ないながらも強烈な印象を残した。
この人最近見たキングズマンのラスボスを演じていた役者さんだが、英国俳優陣の実力って底知れないなと改めて思った。
人や場面の動きがそれほど多くない映画だけに脚本で如何に引き込めるかが勝負の映画だが、脚本と演出と俳優の技量で心底楽しませる最高に面白い映画だと思う。
当時の陪審員制度の脆さも何となく伺えるのも面白かった。(ある意味ヤバいけどw)