「マクベス殺人事件」マクベス 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
マクベス殺人事件
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思い返せば、コーエン兄弟は「ブラッド・シンプル」のしょっぱなから犯罪映画にこだわりを持ってきた。(この映画は兄の単独作だが)「マクベス」もまた、ダンカン王殺しという犯罪をテーマにした作品である。“森が動く”とか“女から生まれた者”などのキーワードによるミスディレクションを巧みに用いつつ、破滅への運命をたどる主人公を冷徹に描いていく。
「マクベス」の映画化作品は、黒澤明とロマン・ポランスキーによるものを見ているが、今回の作品が最も演劇的だ(オーソン・ウェルズ版は見ていない)。背景は書き割りのように人工的で、台詞も修辞に彩られた原作の言葉をほぼそのまま移しているようだ。シェイクスピアの台詞は通常の会話の3倍くらい濃密で、聞き流しを許さない。
マクベス夫人は原作ではどのくらいの年齢の設定なのだろうか。フランシス・マクドーマンドと、ポランスキー版のフランチェスカ・アニスではかなり年齢の差がある。
コーエン兄弟のモノクロ作品は「バーバー」以来か。本作の上映はまったく予期していなかったので、ファンとしては嬉しい驚きだったが、いかんせん渋すぎた。既報のロス・マクドナルド原作の「ブラック・マネー」の映画化の話はどうなったんだろう?楽しみにしていたのだが。
ちなみに、ジェイムズ・サーバーの「マクベス殺人事件」では、ダンカン王殺しの犯人はマクダフまたはマクベス夫人の父という説(?)が唱えられている。
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