なぎさのレビュー・感想・評価
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暗闇と凪
新鋭の監督が多くの賞を受賞している作品、どうにもこのパターンで名作に巡り会えた試しが無いんですが、今作も言わずもがなでした。考えるな、感じろ。系のやつです。
とにかく画面が暗いのが特徴的です。どんなシーンも意味なく暗く、それでいて会話もひそひそ話レベルのボリュームなんで聞き取りづらいです。
時系列も反復横跳びしまくってるので、今流れてる映像が現代なのか、それとも少し前なのか、それとも主人公の幼少期なのか、それとも現代とはまた違う時間帯なのか、最初から最後までどの時代を見ているのかの判別がつきづらい作りにしたのはなんでなんでしょう。
登場人物の行動がとにかくフワフワしていて、兄妹以外の関係性もフワフワしているので、誰が誰で一体何してんだ?の繰り返しです。近親相姦やネグレクトを描くのか?と思いきや別にそんなことはないですし、事故で失った妹の事について描くのか?と思いきや、それまた宙に浮いてますし、人種の問題も触れるのか?と思ったら怒鳴られてる様子くらいしか映りませんしで、もう何も分からなかったです。
主人公も感情が全く読み取れませんし、喋る場面が本当に少ないですし、急に妹に口付けしたかと思いきや、現代では性行為に勤しみますしで、もう何これと呆れ果てていました。
雑に褒めるとするとユニークだなって思いました。
エンドロールでベーコンパンケーキの歌が流れるんですが、これがお経みたい、というかそのレベルを超えて聞いてて気が狂いそうになりました。なぜこの曲をよりにもエンドロールで使用したのか…。全く意味が分かりませんでした。
中身が詰まってそうで何も分からなかった邦画は久々だなと思いました。どうしてこんな作品が生まれてしまうのか…。それとも自分がこの作品の魅力に気づいていないのか…。
いやそんな事はないと思います。そう信じたいです。
鑑賞日 5/30
鑑賞時間 16:15〜17:50
座席 G-11
ベーコンのパンケーキと風鈴
目に光がなく、人と関わることを極力避けているように見える孤独な青年文直。
夜は中華料理屋の厨房で働いているが、うさを晴らしたい男性客が外国人店員に罵声を浴びせる様子を空虚な心で見つめている。
ある夜、彼は仲間に誘われ、渋々心霊スポットでもある山奥のトンネルに向かうことになる。
そこは観光バスが事故を起こし、多数の犠牲者を出した場所でもあった。
赤く仄かに光る不気味なトンネルを車で走行するうちに突如ドアが開き、後部座席に座っていた文直は道路に投げ出される。
足を引きずりながら彼はトンネルの出口を探す。
ここまでがひとつの流れで、ここから先は文直の回想シーンが時系列を前後させながら展開していく。
幼い文直は妹のなぎさと寄り添うように生きてきた。
情報が少ないので、二人の両親がどのような状況にあるのかは定かではない。
父親が仏壇に向かってぶつぶつと読経している場面があるので、母親がどこかの段階で亡くなってしまったことは分かる。
喘ぎ声をあげてセックスをしているのは父親とその愛人なのだろうか。
画面は暗く、意図的に人物の表情を隠しているので、観客は色々と想像するしかない。
喘ぎ声が聞こえる中、押し入れの中でライターの火を灯して息を潜める文直となぎさの姿が印象的だった。
やがて文直となぎさは単なる兄妹以上の関係を持っていくことが示唆される。
文直を待ちくたびれて玄関先で寝てしまったなぎさの頬を撫でて口づけをする彼の姿と、目覚めた途端に彼に抱きつくなぎさの姿がとても危うく印象的だった。
そして彼はなぎさを故郷に置いて、東京の大学へ進学することを決意する。
はっきりとは言及されないが、なぎさが観光バスの事故によって亡くなったらしいことは分かる。
そしてそこから文直の心が閉ざされてしまったことも。
台詞も極端に少ないため、理解するのが難しい作品ではあるが、分からないことがこの映画の魅力でもあると感じた。
トンネルを抜けた先で文直は、ある女性と遭遇し抱き締められる(例によって女性の表情は一切分からない)。
後に彼女はトンネルの事故によって息子を失った母親で、夜になると息子を求めてトンネルの付近をうろついていることが分かる。
真実は分からない方が魅惑的なこともある。
まるでドキュメンタリーを観ているかのような自然でリアルなやり取りも印象的だった。
シーンの意味は分からなくても、とても画に求心力のある作品で、それこそ画面の中で登場人物がリアルに生きているように感じられるからこそ、最後まで惹き付けられたように思う。
とてもダークな作品ではあるが、押し入れの暗闇の中で天井に貼られた暗闇で光る星を眺め、可愛らしいベーコンのパンケーキの歌を歌うなぎさ、そしてガラスのコップで風鈴を作る文直となぎさの微笑ましい姿に救われる部分もあった。
さて、この日は上映終了後にトークショーがあり、監督の作品に込めた想いを色々と聞くことが出来た。
シーンによってはほとんどアドリブらしく、だからこそあのようなリアルな空気感が出せたのだろうが、きちんと台本通りのシーンもあるらしく、そこの違いがほとんど分からないのは凄いと感じた。
クレーマーの男性客と仏壇に向かって読経する父親は後ろ姿しか映し出されないが、それはクレーマーの男と父親の姿をダブらせる効果を狙ってのものらしい(俳優は宇野祥平と日向丈)。
一貫して喪失の物語を追及し続ける古川原原監督の他の作品と、この映画とはまったく内容の違うオリジナルの短編である『なぎさ』も観てみたいと思った。
伝えすぎず、観客に任せすぎずのバランスが秀逸
アート作品や、監督の自己満作品があまり自分には響かないのだが、とても興味深く、面白かった。
監督いわく、言葉でなく映像で表現したかったということで、言葉ですべて表現するのが小説ならば、映像と音声ですべて表現しているのがこの映画だった。
セリフは少ないし、表情も少ないのだが、決して分かりにくいということはない。
時系列、関係性などは映像から理解できるし、アート作品のように現実離れした比喩のようなものもあまりないので、すべて観客の想像に任せるだけでない、絶妙なバランスでとてもよかった。
音声に関しても、カメラの動き、役者のが動き少ない分、集中することができ、なんともいえない雰囲気を助長し、作品へ没頭させてくれる。
自分で考えながら見るので頭は使うのだが、わかりやすい映画へのアンチテーゼとともに、映画の醍醐味と可能性も感じられた。
次回作に期待。
2023年劇場鑑賞71本目
次作楽しみ。
冒頭みて、リンチや林海象思い出した。
あらすじ読んでなかったので映画だけでは妹がトンネルで事故死してる事わからなかったよ、どこか重要なセリフを聞き逃したのかもしれない、ごめん。
このトンネル高速バス通らないよなあと思ったせいかな。おばちゃんはいたけど妹の幽霊出た?あまりはっきりさせたくなかったのだとは思うが、やっぱり後半どこかのタイミングで妹の死んだ事を分からせる部分が必要だったと思う。予算の問題だったり、初期設定の齟齬、プロット、編集による誤解だったりするから要注意だなぁ。2週間の撮影の割には絵は美しく観る人を惹きつける。編集の絶妙な感じが最後まで見てる人を引っ張る。
エンタメはアクションでもドラマでも観てるひとに話を理解させる事はマストだと思う。
しかし観てる人の知識や理解を超え、観る人を試す様な映画も私は大好きなので4にしちゃった。
妹を置き去りにした自分を責め、電話しかとした事を責め、、、事故で失った喪失感はかなりエグいだろうなぁ
ベーコンパンケーキ
長崎から上京し奨学金で大学に通う主人公が悲しい過去を振り返る話。
バイト先の新人の歓迎会と称していた食事に連れ出された後、肝試しと言って以前多数の死者が出たバス事故があった山奥のトンネル連れて行かれて…。
あらすじには幽霊云々書いてあるし何が起きたか解りにくかったけれど、車のドアは自分で開けたんですよね?
そして良く解らないまま進行して行ったけれど、最初からどういう場所かは知っていたし、その後の車の中で説明された「幽霊」ってことですよね。
主人公に限らず都合が悪くなると返事もせず黙り込むのを多様し過ぎだし、セリフも余りないのに真っ暗な影像に後ろ姿だったりドアップだったりヤケに引いた構図だったりの影像が多くて何が起きているのかどんなリアクションをしているのか、何なら誰が映っているのか非常に解り難い。
その上余計な匂わせみたいなものもたっぷりだし…理解出来ていないから匂わせに感じるだけ?
高速バスはそんな場所走る訳ないだろうし、主人公はそんなところまでどうやって行ったの?
そもそも確かに恵まれた環境とは言えないけれど、別に父親と険悪な感じもなく描かれていないだけで会話もあるみたいだし、ちょっと盛り過ぎ?このサイトのあらすじ紹介が悪いのかな?
もっと観やすく解り易くつくってくれたら浸れたのかなとは思うけれど、自分がちゃんと理解出来ているのかも怪しい感じ。
奇抜で難解なところがすべっている映画
■結論
単純な話しをあえて奇抜に難解にしているところがすべっている。
シンプル・イズ・ベストの逆を行く映画。
つまらない退屈な映画だが「こんな変わった映画あるよ」と勧めたくなる。
退屈なのに目が離せなかった不思議な映画。
常識を知らない監督が非常識に作った感じ。
■難解
時系列が行ったり来たりでストーリーがよくわからない。
真っ暗なカットが多く何を映しているかわからない。
悪い意味で想像力を掻き立てられる。
結局、何が言いたいの?エロス?変態?餃子?スマホ?兄弟愛?お化け?わからん。
■奇抜
ワンカットあたりの尺が意味なく長くて不快。
カット割りが荒い。
変なアングルで撮影しているから、そのカットが持つ意味をあえてあやふやにしている。
ほとんどのカットが固定カメラで撮影していて素人感が出ている。なぜ、そんなことするの?
■退屈なのに目が離せない
「この変な感じ、いつまで続くの?あっ終わったのね」て感じの映画。
最近の映画に欠けていた映画体験
遅めの時間の上映で、余韻を噛み締める時間も確保して、出来れば1人で秘やかに観たい映画。
導入の描写は人によっては冗長に感じるかもしれないが、そのトンネルをくぐると、登場人物たちの繊細で純粋で複雑な心の動きがすっと入り込んで来て、非現実・非日常的なモードに入ることが出来る。
若い俳優さんたちの丁寧な演技も圧巻。最近の映画がSNS時代感があってつまらないと思っている人にはぜひ見てほしい、良質で新しい文学作品のような映画です。
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