ヴェラは海の夢を見るのレビュー・感想・評価
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喫煙姿かっこいいオブザイヤー
主人公のヴェラは幼い孫がいるぐらいの女性なんだけど、夫は急死するわ、やっと売れると思った不動産は親戚に奪われそうだわ、娘には嫌われてるわ、いろいろ大変。憤りや悲しさや恐怖を押し殺して喫する煙草の味がそれはもう苦そうで。特に、高速道路の建設現場をバックに吸ってる横顔が印象に残った。
タイトルにもなってる「海の夢」の描写はあまりいいと思わなかった。こういう心情をそういう夢で表すの普通すぎて、監督ここはどうしたんだろうと思ったぐらい。
テレビ局で手話通訳の仕事をしているヴェラの無表情さがそこはかとなく笑いを誘う。声に出して笑いはしないけど。
映画の9割がたは、クズな男たちにムカつく時間なんだけど、ちゃんとカタルシスはある。ヴェラと娘が車内に二人のシーンで、胸に温かいものが一気に満ちた。
余談だけど、向こうの人は着るものが素敵。お金が苦しい(という設定の)人も、古いものを着ているな、いつも同じものを着ているな、という印象にはなれど、そのどれも最初から500円だったものには見えない。ファストファッションの波が押し寄せてないだけのことかもしれないけど、そんなところから文化的な豊かさを感じる。ヴェラのコートも物がよさそう。
コソボの映画って初めて観たかもしれない。こういう出会いがあるのが映画祭のいいところ。今年の東京国際映画祭で私が最初に観た一本。終わってみればグランプリを受賞したということだった。
泥臭い内容ながら映像と音響は叙情的
TOKYO FILM 2021
相続とか賭博とかウラ社会が話の中心をなしているだけに、かなり泥臭いストーリーだったけれど、神秘的な映像や印象深い音響効果で、内容とは裏腹に、作品としては非常に叙情的な印象でした。
嫌な流れのストーリーに、手話や現代演劇、途上の建造物とか遠景などをうまく絡めて、緊張感ばかりもちろんのこと、不思議と平穏な雰囲気も醸しだしていたような気がしました。
結末は決してハッピーではないかもしれませんが、なんかこれはこれで良かったのかもと思ってしまいました。
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