ナイトメア・アリーのレビュー・感想・評価
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【”人道外れし者、蠱惑的ラビリンスに迷い込み自らの野心を果たすべく謀略を画す。”善悪、美醜、貧富。相反する価値観を包含したサスペンス・スリラー。魅惑的且つ魔窟の如きギレルモワールドを堪能する作品。】
ー 冒頭、荒涼とした一軒家で男が重い荷物を引きずり、床に開けた穴に放り込み、マッチを擦り躊躇なく穴に投げ込み、家は炎に包まれる。男は、平然とした顔で家を後にする・・。-
◆感想
・印象的な冒頭のシーンが、ラストでもう一度”細部まで”映し出される。そして、その男、スタン(ブラッドリー・クーパー)が善性薄き男である事が分かる。
・汚れた姿のスタンは、”獣人”をメインの出し物にする怪しげなカーニバルと出会い、率いる男(ウィレム・デフォー)に気に入られ、タロット占い師ジーナ(トニ・コレット)、後に恋人になる”感電ショー”の人気者モリー(ルーニー・マーラ)とも関係性を築き、を磨いていく。
- ”獣人”は”こんな筈じゃなかった・・”と何度も繰り返し、最後は雨中に放り出され、息絶える。そして、ジーナのタロット占いは、独立するというスタンの不吉な運命を言い当てていた・・。-
・都会に進出した、スタンはモリーを助手にして、読心術師として名を上げる。そんなある日、出会った謎めいた心理学博士のリリス(ケイト・ブランシェット)。
- スタンと、リリスの駆け引きが面白い。観客の前で、”バッグの中身を当てて・・”と挑発するリリス。スタンの読心術で辛うじて危機を脱するが・・。
ブラッドリー・クーパーと、ケイト・ブランシェットの瀟洒な意匠に囲まれた部屋での駆け引きは一見に値する。妖艶とした微笑みを浮かべ、スタンを挑発するファム・ファタール、リリス。ー
・そして、リリスから紹介された”訳アリの富豪”エズラ・グリンドル(リチャード・ジェンキンス)は”亡き恋人”の出現を要求する。
- モリーを”亡き恋人”に仕立てようとするスタンであったが・・。-
<年月は流れ、再び身をやつしたスタンが訪れたカーニバル。主人の脇には、以前にも見た母親を胎内から殺した”クレム”が同じようにホルマリン漬けにされている。
主人は”読心術は時代遅れだ・・。獣のような恰好で舞台に出るのはどうだ・・。”とスタンに告げる。
それを聞いたスタンは、自らを嘲笑うようにヒステリックな声で笑う・・。
今作は、人道を外れた者が、巡り巡ってその報い受ける、シニカル且つ耽美的で蠱惑的な因果応報の物語である。>
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