「映像の素晴らしさと安定のタイプキャスト。」ナイトメア・アリー 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
映像の素晴らしさと安定のタイプキャスト。
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ギレルモ・デル・トロが描くサーカスや読心術ショーのいかがわしくて禍々しい世界観は、かつてティム・バートンに期待されていたがもはや観られなくなった(もしくはセルフパロディぽく見えてしまう)ものを正面から引き受けてくれていて、目のご馳走だと思う。古い映画のリメイクというより原作小説に忠実という触れ込みだが、ギークの看板なのは旧作のものをほぼそのまま再現していたし、冒頭のシーンはアンドリュー・ワイエスの印象であるし、たぶん自分なんかでは気づけないほどオマージュが詰まっていそう。全部わかる必要もないと思うが、豊潤な映画や文化や芸術をふまえて出来上がったリッチが映像が美しい(個人的には『パンズ・ラビリンス』のゴシック感の方が好みではあるが)。
物足りないと思うのは、もうこの顔を出しておけば間違いなしくらいの、鉄板のくせ者たちが揃っていて、ロン・パールマンやウィレム・デフォーやケイト・ブランシェットは笑うくらいパールマンでありデフォーでありブランシェットだし、デヴィッド・ストラザーンとリチャード・ジェンキンスはお互いの役を入れ替えても気づかないかもと思うくらいポジションが似ている。キャスティングがイメージそのままの安心感が、いささか物足りなさにつながっている部分はある。あと情念みたいなものが、あまり迫ってこないのはデル・トロの作家性なのかも知れないなと思うようになってきたが、今度はいかに?
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