「エンディング最高映画」ちょっと思い出しただけ Bigmouthさんの映画レビュー(感想・評価)
エンディング最高映画
最高。
22年最高の1本がもう決まってしまったと騒ぎたい。
話は別れた二人が別々の人生を歩んでいるところから始まる。次に、元カノがあるきっかけで元カレの姿を見かけると、その人との日々を思い出してしまう。
別れた日のこと、楽しかった日のこと、付き合った日のこと、出会った日のこと、そして今の旦那との生活というふうに時間軸が戻り、帰ってくる。
その記憶はすべて彼の誕生日(6月27日だっけ?)の出来事で統一されていた(はず?でも”出会った日”もそうだっけ??)
最後にクリープハイブのナイトオンザプラネットが流れて「ちょっと思い出しただけ」のタイトルがドーンと出る。
この瞬間に感じる「悲しさ」は120分いろいろなところに連れて行かれて、たっぷり感情移入していた分だけ重みがある。最高の120分だったという有終の美。
エンディングでは、めちゃくちゃ丁寧に作った醤油のように複雑な感情になってしまっており、フィクションなのに実感がちゃんとある。
複雑な気持ちを分解すると、まず確実に存在する「短調な」気持ちがベースなのだが、それに「甘い思い出」や少し「遠い過去の記憶」であること、でも「今の自分を構成している出来事」であり、「もしあのとき別れなかったらというif」などいろんな要素になるのか。これらがすぐそこに佇んでおり、ただの『悲しい』では片付けられない。
映画的にはシーンの切かわりが単純なフェードアウトで(しかも毎回同じ)、あえてなのか比較的低予算なのか、どこかB級感があった。
でも身近な出来事の話だからそっちのほうがいいや。とはいえ有名どころが脇を固めていたし、そんなことないかな。
時系列が逆転していくが、コロナ下でマスクを付けたシーンから逆にマスクがなくなったことがヒントになり、二人の関係性も変わることで逆転を確信させる作り。これは「今」じゃないと使えないから新鮮だった。10年後は通用しないのかもしれない。
葉がタクシーに乗せた客の中に離婚記念日の兄ちゃんがいたが、その人達が前は照生のアパートの住人だったという偶然の設定は偶然すぎていらなかった。
時の流れは皆平等という印象を得させたかったのかもしれないが、醤油ラーメンに濃い目のにんにくを入れたようでちょっと雰囲気に会わないように感じた。
良かったシーンは
・ 野原葉(元カノ)と照生(元カレ)が出会って、帰り道にもう会わないじゃんってことでストリートミュージシャンに合わせてふざけて踊ったところ。あのシーンは最高だった。見ていて嘘偽りなくマジで楽しい気持ちになる。フィクションでも全然楽しいってやっぱりありえるんだなと改めて実感した。この女優、楽しそうにしてる演技が最高に映えるなぁ。後ろで歌ってるのが尾崎世界観なのでもうバッチリ。
・ 葉が照生に「私達ってどうなの?」と詰め寄るシーンは思わず笑ってしまうが、作品のバランスを崩さない茶目っ気で気持ちよくくすくすできた。
他にも、いつも公園で妻を待つ男性が過去に遡ると、待っていた妻が傘を持って現れるところはベタだけど、狂うだけの理由があるのかと納得。
尾崎世界観だけトリックスターというか、フィクションを設定する側の人が作品に出ちゃっていて、じわじわと不思議に感じられて面白い。
時世もあり満席ではなかったが、エンドロールの最中に出る客は皆無だった。最後に来客限定で壁紙ダウンロードのQRコードが出たが、短すぎて読み取れない人がたくさんいた。あれは2回見に行かないと駄目ってことだな。