「消えない存在」ちょっと思い出しただけ 0128 wakaさんの映画レビュー(感想・評価)
消えない存在
今日は久しぶりに天気が良いから、同居人が掃除機を引っ張り出して、いつも絶対にしない掃除をしている。本当は朝早くにモップで掃除済みだけどな。言えないで「ありがとう」。
体調が良くないからテレビがうるさくて消した。同居人は不在にして見ていないのに、消すと怒る。しぶしぶ黙ってつける。
そんな午前を過ごしてここに座っている。
ベッドルームの日めくりカレンダーは11月9日のまま。まだめくれない。
私が映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』を観たのは今年の9月11日。
参加したライブ「クリープハイプの日」で新曲として演奏され、印象が強く、観てみたいと思った。
世界のあらゆる街の同時刻、タクシー車内の描写。
人の崇高さ、孤独、先入観の怖さ、言葉の暴力、そしてあたたかさ、救い。
タクシーは人の本質があらわになる独特な場所。
クリープハイプの曲「ナイトオンザプラネット」が原案というこの映画を観た。
余計な説明がなくて、観る側に投げてくれるのが心地よい。
「?」と思いながらついて観ていくと、いつしか照生と葉の心をなぞっている。
クリープハイプの曲は映画に添えられる、というよりも、寄り添って溶けている。
演奏シーンもあり嬉しい。
映画側から捉えるクリープハイプは初めてで新鮮だった。
フォトアプリで「~年前の今日」みたいな写真を見せられる。ほとんど忘れている。
誰しも思い出せる恋愛があるというけれど、私はそれは35年前のもの。
写真は1枚も残っていないし、楽しい思い出よりも別れの時の嫌な思いしか残っていない。
東京の夜は明るくて、闇は貴重たが、ひとり暮らしには大敵。
かつての私も人のぬくもりを求めて街に出た。
たとえそれが本物ではなくても満たされた(気になっていた)。
主人公二人の日々は本物だ。出会えたことが羨ましい。
この映画で時をさかのぼることで伏線を逆に追うことになる私たちは、
ラストで胸がいっぱいになり、どうしようもない希望を持つことになる。
クリープハイプを愛し、ずっと曲を聴いている私には、最高の贈りものだった。
尾崎さんのあの目が忘れられない。
上映後、迷わず観客賞に投票した。