「ドタバタトラブル続出しても、幸せの門出、全力でお手伝いさせて頂きます」ウェディング・ハイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ドタバタトラブル続出しても、幸せの門出、全力でお手伝いさせて頂きます
TVドラマで様々な職種の働く女性を体現してきた篠原涼子。
本作で彼女が扮するは、ウェディング・プランナー。
新郎新婦の一生の思い出の為に、最高の結婚式にすべく奮闘するサポート役であり、式全体の演出/プロデュースまで。
まさしく、プロフェッショナル!
そんなウェディング・プランナーを題材にした、篠原涼子十八番のお仕事ドラマかと思いきや、
脚本はバカリズム。独特の笑いのセンスの持ち主の彼だもの、真っ当なお仕事ドラマを書く訳がない。
新郎新婦、親族や関係者、出席者、ウェディング・プランナー、“その他”…一組の結婚式に関わる人たちの群像珍騒動の開宴。
まず、新郎新婦の出会い~プロポーズまでをサラ~ッと。
お見合い結婚の彰人と遥。
どんな式にするか計画。
…本当新郎彰人、結婚式はやりたくない。面倒。
でも挙げなければ、一生の凝りもの。これからの長い人生を共に“円滑に”歩む為には、ここは挙げなければ。
式場も決めた。日取りも決まった。予算もそれなりに抑えて。
次は、誰を呼ぶか。
線引きは結構重要。学生時代からの親友は勿論。大学時代の知人はNO。だって、元カレが…。
たまたま知り合ったバーのマスターは別にいいでしょう。…と思ったら、乗り気。よ、呼ばなきゃダメ…?
職場の同僚、上司。これに人生の再起を懸けている人だっている…?
学生時代の後輩も然り。これに自分の才能を発揮する事を懸けている人だっている…?
スピーチや余興。上司、友人、親族にとっては“見せ場”。あれやりたい、これやりたい。な、投げ縄まで…?
断るに断れない。投げ縄おじさんは断ったけど。
私は結婚してないから分からないけど、結婚式挙げた事ある人にとってはあるあるなんだろうなぁ。
バカリズムがユーモアたっぷりに綴る。
シュールさも勿論。
式で祝辞述べる事になった新郎上司。家庭では不倫がバレ肩身が狭く、職場でも存在感ナシ。そんな時頼まれた大役。この日の為に、自分の再起も懸けて、研究に研究を重ねた爆笑スピーチを用意。さあ、遂に、お披露目!
式のVTRを頼まれた新郎の後輩。バラエティーのディレクターとして活躍しているものの、本当に自分が作りたいものじゃない。自分が本当に作りたいのは、かつて見たようなロシア映画。そんな時頼まれた大役。この日の為に、今こそ自分の作りたい、自分の真の才能を見せる時!
乾杯のスピーチを頼まれた新婦上司。いつも爆笑で場を沸かす人。が、今回は先手を取られた。しかし、ここで負けてたまるものか。皆が俺の爆笑を待っている。
各々の思惑が交錯。
…って、こんなに尺必要…?
バカリズムらしいシュールさ。
そんなこんなやってたら、時間を大幅にオーバー。スピーチに20分以上って…。
このままだと披露宴途中で終わらなければならない。
何かカットしないと。が、この後も余興はたくさん控えている。皆、ヤル気満々。
が、時間が…。
全部やる事は出来ないのか…? 新郎新婦の頼み。
ハイ、無理です…と言いたい所だけど、言わない。
無茶な頼みだけど、お客様の一生に一度の晴れの日のご要望に応えるのが、ウェディング・プランナー。
あの手この手を駆使して、“超高速!時短結婚式”を挙げさせて頂きます。
腕利きウェディング・プランナー、中越の底力。
無理言って、皆様にご協力。
ケーキ入刀、お色直しも素早く。
あるスピーチは、一言だが、直球感動のスピーチを。
新郎友人たちの太鼓、新婦友人たちのダンス、新郎父のマジック、新婦父のマグロの解体ショー。これらはぶっつけ本番で、奇跡のコラボ!?
お陰で時間短縮成功!
…と思ったら、新婦の両親へのスピーチを前に、新婦父がマジックで消えちゃった!
どうなる、この結婚式~!?
篠原涼子がコメディエンヌぶりを存分に発揮。
豪華キャストも笑演。
でも、後半から場をさらったのは、次の二人。
結婚式は無事終了。
皆、幸せ。満足。
本当は式に乗り気じゃなかった新郎から挙げて良かったと言われ、ウェディング・プランナー冥利に尽きる。
ところが、式の裏でとんでもない事が起きていた…!
出席者じゃない男が二人。
一人は、新婦の元カレ。バカ友らと温泉旅行中だったが、元カノの結婚を知り、湯に浸かっていたらほぼその場の勢いで、元カノを奪い返す! ドラマのような展開、“リアル卒業”に行くぜ!
ガンちゃんが珍しいコメディ演技。しかも、下ネタまで…!
式場内をうろつく男。結婚式の関係者…? 否。
ふらりと忍び込んだご祝儀泥棒。
ご祝儀を手に入れ、お暇しようとするが、何かと新婦元カレと鉢合わせ。
こちらは警戒、あちらは不審し始める。
向井理に気を付けろ!
にしても、イケメン二人にこんな役やらせるとは…。
元カレ乱入もご祝儀泥棒も、これらも結婚式あるある…?
な訳ないでしょう。完全ドタバタコメディ。
まあ気軽に見れて思ってたより楽しかったけど、結局何やりたかったの…?
ウェディング・プランナーの奮闘コメディ…?
結婚式あるあるコメディ…?
晴れの日の裏の、ドタバタ人間模様コメディ…?
元芸人という大九明子監督。ならばコメディは本来のフィールドであるが、バカリズム色が濃かったのか、『勝手にふるえてろ』のような才気は薄く。
伏線など張って面白いのは面白いが、バカリズムの脚本は少々安全パイに置きに行った感もあり、『地獄の花園』のような突き抜けた感に乏しかった。
トラブルや難点もありの結婚式だったけど、晴れやかな宴の終わりは、後味良くハッピーエンド。
人と人の幸せの門出を全力でお手伝い。
笑顔になって欲しい。
自分もそうだった。ウェディング・プランナーになった理由。
大変だけど、やりがいある仕事。
実は意外とちゃんとした“ウェディング・プランナーの品格”であった。
でも“結婚”を題材にしていながら、本作公開前に縁起悪く(?)、篠原涼子は離婚。しかも、その原因は…。
ひょっとしてこれが、バカリズムの一番のブラックな笑いだった…?