あのことのレビュー・感想・評価
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金獅子賞も納得の容赦のなさ。
望まれる妊娠、望まれない妊娠。同じ妊娠でも両者は両極端だ。例えば愛する人と結ばれて計画的にする妊娠は前者、レイプなど女性の思いもよらない妊娠は後者だろう。つまりはどっちに分類されるかは女性の心境によるということ。
妊娠した子供を産むか産まないか。一部の国を除けば、大抵の国では女性の意思が尊重される。
キリスト教圏ではない日本では1948年ごろから人工中絶が法的に認められていた。しかし、カトリックが多いフランスでは1975年まで合法化されていなかった。
1940年生まれの主人公アンヌの生きた時代はまさに堕胎は犯罪行為。子供を神からの授かりものととらえるキリスト教圏の国では女性の意思よりも、理由はどうあれ授かった命を尊重するというのもわからなくもない。現にバチカン市国などはレイプにより出来た子の堕胎でさえも禁じている。確かにレイプでできた子であってもその子には罪はない。
女性の意思を尊重するか、子供の命を尊重するか、考えれば考えるほどわからなくなる。ただ、キリスト教的思想のない自分としてはやはり子供を産むか産まないかは最終的には女性の意思にゆだねられるべきだと思う。かつて女性は子供を産む機械なんてとんでも発言があったけど、やはり今までの社会は女性の意思を蔑ろにしてきた経緯があるので尚更そう思う。
また、女性の意思よりも子供の命を尊ぶというのなら、たとえばアンヌのような女性だけでなく社会人として働く女性が結婚して出産しても学業や仕事に支障がないようにシステムを整えるとか、出産育児による女性のハンディを一切なくしてから初めて言えることではないだろうか。
折しもアメリカでは国内で少数派のキリスト教原理主義者が判事の過半数を占める最高裁で人工中絶を禁ずる判決が出て国家を二分するほどの騒ぎになっている。いままで認めてきた中絶を禁止するという時代に逆行したものとして批判が多い。
確かに過激な原理主義者が言う命の尊さとかは聞いていて胡散臭い。何故なら彼らの中には中絶をする病院を脅迫したり放火したりして、人命軽視も甚だしい本末転倒行為を繰り返しているからだ。そんなにいうなら女性の望まない子供を全て引き取って育ててみろと言いたくもなる。
思わぬ妊娠に戸惑う主人公のアンヌ。彼女は優等生で進級を目指しており、将来の展望もあった。
しかし、未婚で若くしての妊娠というだけでなく、堕胎が罪となるという、女性には全く選択の余地がない当時の時代背景が彼女を徐々に苦しめてゆく。
そして妊娠期間が経過してゆくごとに望まない妊娠をしたアンヌにとって体内に異物が育ってゆくことの不安が見ている方にもひしひしと感じられた。
正直、最初はアンヌ役の女優さんがとても可愛らしい方で見とれてみていたら、その後の展開にただただ啞然とさせられた。間違っても女性の妊娠の不安や苦しみに対して分かった風なことを言えないほど痛々しい姿を見せつけられる。
特に自分で針を刺して堕胎しようとするシーンや闇堕胎を受けるシーン。そして極めつけは終盤のトイレのシーン。
まさかここまで容赦がない映画とは思ってなかったので、思いきり頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
最近でも「朝が来る」や「十七歳の瞳に映る世界」など類似の作品はあったが、本作はまさに別格だった。
本作はR15だけど性教育の教材として中学生くらいから男子にも見せるべきではないだろうか。そうすれば軽はずみに女性としたいとは思えなくなると思う。でも衝撃的過ぎて女性に対して不能になるかも。
【主人公の女子大学生の視点で描いた圧倒的臨場感、妊娠が進むに連れて作品への半端ない没入感を味わった作品。”痛かった、不安だった。それでも私は未来が欲しかった・・。”手に汗を握りながら観た作品である。】
ー 冒頭は、”避妊しないから妊娠したんだろう!”と思いながら観ていたが、女性にも当たり前だが性欲はあるし、(だから、避妊具や薬が開発されてきた。)アンヌ(アナマリア・バルトロメイ)だけの責任じゃないよな、と考え直して鑑賞続行。
1960年代のフランスって、中絶が違法とされていた事も、初めて知った。
私は中絶は幾つかの条件を付けて”是”とする考えを持っている。
何故なら、罪なき命を亡くする行為には違いないが、望まない妊娠をして未来が変わってしまった女性達が現在、特に過去も含めて世界には、多数いるからである。今作でも言及されているが、無理な中絶をして、死に至ったり、生まれた子を遺棄したり・・。ー
◆感想
・アンヌを演じたアナマリア・バルトロメイの強い意志を感じる大きな眼とその目力が印象的である。美しく、白い肌も勿論であるが・・。
今作では、彼女の眼と目力に強く引き込まれた。
・アンヌが子を身籠った事が分かるシーンから、第一週~第一二週と章立てで物語は進む。
ー この構成が絶妙である。いつの間にか、アンヌが一人追い込まれて行く姿が、自分の心と被って行く・・。早く、早く何とかしないと・・。焦燥感が半端ない・・。-
・普通は、中絶シーンがある映画は、相手の男が付き添ったりするものだが、今作では父親の若き男は、当てにならず友もあてにはならない・・。時代的背景があるのだろうが、アンヌは正に孤立無援状態になっていくのである。
ー 故に、夢見る教師になるための勉強も疎かになっていく・・。見ていて、辛い。ー
■壮絶なのは、アンヌが自ら子を堕胎しようとするシーンである。
私は男なので良く分からないが、物凄く痛そうである。”除菌とか、そんなので、良いのか・・、”と心配してしまったし、闇の堕胎業の女性の部屋でのシーンも、物凄く痛そうである。傷みゆえに声を上げると、睨みつける堕胎業の女性の冷酷な目。
ビックリしたのは、彼女がトイレで子を堕胎するシーンである。
もう、痛そうで、可哀想で・・。手に汗を握りながら観ていたよ・・、自分がアンヌになったかのように・・。
それにしても、アンヌのど根性と、アンヌを演じたアナマリア・バルトロメイの覚悟を決めた姿は凄かった・・。
<ご存じの通り、今作は今年のノーベル文学賞の受賞が決まった、アニー・エルノーが、自身の中絶体験を題材にした私小説「事件」の映画化作品である。
中絶が違法とされた時代に、アンヌが、自由で自ら望んだ未来を手に入れるために命懸けで奔走し、独り孤独と恐怖と焦燥を抱えながら、突き進む姿を、アンヌの視点で赤裸々に描いた作品。
映画を観ていてその世界に没入する事は良くあるが、異性の視点でここまで我が事ながらの様に没入して観た作品は、初めてである。>
「妊娠してます・・・」、「不公平!」これ一番言いたかった事かも
女性が人生で成功するのに多くの規制があった時代において、妊娠するという事はとてつもなく大きなハンデであったというのは理解できるが、その可能性をわかった上での行為であり、皆リスクを考え自制しているわけなので主人公には同情する事ができず、割と冷めた目で観てしまった。
避妊しなくても良い状態になり男友達とすぐに性交渉を持つ自由さは逆にリアリティがあってフランスっぽいと思った。
女性作家の原作で女性監督の演出だからでは無いと思うが、出てくる男達も皆容赦なく身勝手で情けなく描かれているのも良い。
3人組の一人の友達が経験済みだと告白した事で、一番遊んでそうな友達が実は一番保守的で奥手だと言うことがわかり、目の前で実演して見せたことへの滑稽さが後になりジワジワと際立ってくるという見せ方は面白かった。
めちゃくちゃ痛い…
作中で誰一人「赤ちゃんが可哀想」と言わなかったのが、その時代を表しているように感じました。本当に赤ちゃんは、女性の社会進出において邪魔者(と思わせる社会)だったのでしょう。
妊娠出産子育てによって何かを諦めた人は、今も変わらず多いはず。中絶が良いか悪いかは置いておくとして、女性も男性も、もっと自由に生きられる日が来てほしいと思いました。
悍ましくもあり、身勝手でもあり。
墮胎を巡る、それぞれの国の考え方もあるだろうけど。
問題は堕胎か?
それ以前に、妊娠する行為を自らの意志でやったら、その責任はその人にあるでしょ。
女性の権利の問題じゃない。
自分の体が傷つくなら、自分の未来を棒に振るとわかってるなら、ほかにやりようもあったでしょ。
奔放にやりまくって、妊娠したら運が悪かった、それは違うよね?
身勝手としか言いようがなく、観ていて気持ちが悪くなるほどの嫌悪感と腹立たしさしかなかった。
堕胎せざるを得ない場合もあるだろうけど、アンヌの場合は、自分勝手な結末としか思えないんだけど。
二度と子どもを持とうなどと思うなと、あの臍の尾を切る勇気もないくせに。
今じゃない。
彼女のその身勝手なセリフに、腹が立って仕方ない。
12週の人の形ができつつあるこどもをなんだと思ってるんだろう。
大学に行かなくても、才能があれば作家にはなれるのでは?
命と引き換えにするほどの夢なのか、往生際の悪い女子学生の身勝手なストーリーにしか(ストーリーでもなく)思えなかった。
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