「13階段」あのこと U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
13階段
ホラー映画だった。
生涯No1に怖かった映画は「リング」なのだけど、それに匹敵する。
文部省推薦にするべきだと思う。
子供が産みたい、もしくは産めるって環境の人には全く関係のない映画なので見なくていいと思う。
望まぬ妊娠→中絶までを描く。
現代とは違い、中絶すると罪に問われる時代背景があるものの、女性の心境はさほど変わらないのではと思う。現代での出産は経済的なリスクを感じる人も多いと思うけど、その当時は女性だけが様々なリスクを背負わされる。
今も根本的には変わらないんじゃないかと思うのは、離婚しても養育費を支払わなくても罪には問われず、親権を持った側にだけ、将来や時間に犠牲を強いられる状況がある事だ。
本来、祝福されるべき事柄であるはずで…いや、祝福できる環境であるべきなんじゃないかと嘆く。
子を宿し、出産する。
問答無用で母親の時間は、何年もに渡って育児に奪われる。主人公にしてみたら死刑宣告に等しい。
劇中に何度も「妊娠したら終わり」との台詞が飛び交う。主人公はこうも言う「いつか出産したいけど、今じゃない。自分の将来を棒に振りたくない」…本音なのだと思う。そういうものを代償にしてしまうのだ。
女子が受ける保健の授業を見たわけではないけれど、テキストより、この作品を流した方がいいんじゃないかと真剣に思う。
法律は無くとも同調圧力や道徳心、常識などで選択肢を奪われた女性達は多いのだと思う。
主人公に非がない訳ではない。
だが、性欲は食欲、睡眠欲と並ぶ人間の3大欲求だとされる。これも男性上位社会が植え付けた歪んだ価値観なのかもしれないが…。
とは言え、愛情が深まれば、体を重ねたいと願うのは本能だ。それを否定してしまえば人類に未来がない。
女性に出産を強要するなら、それに伴うリスクを国や社会が解消していくべきだと思うし、女性が背負うリスクを社会が背負える環境にならなければ、国の繁栄なんて机上の空論だと、この作品を見て感じた。
作品的には、さすがのフランス映画で、一切の虚飾がない。赤裸々な台詞と端的なカメラワークが、脳髄に焼き付いていく感覚がある。
ハリウッドのエンタメ感を徹底的に排除した作り。なのだが鮮烈に刻み込まれる。フランス映画の醍醐味を存分に味あわせてもらえる。
またBGMが素晴らしい。
俺にはギターの弦の音色に聞こえた。細く極限までピンと張り詰めた細い弦。
主人公の心情をあれほどまで明確に端的に表現した音楽は稀だと思われる。
孫が女の子なのでお年頃になったら、一緒に見ようと思うし、カップルは見るべきだと思う。