劇場公開日 2022年12月2日

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「違法の堕胎を望む女学生の苦闘を疑似体験させる衝撃作」あのこと 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5違法の堕胎を望む女学生の苦闘を疑似体験させる衝撃作

2022年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

予備知識なしでぼんやり観始めて、大学生の主人公アンヌが1940年生まれという台詞があり、「ジョン・レノンが生まれた年だ」などと反応し、そこでようやく1960年代の話だと思い至った。

スタンダードサイズの画角は、古い時代のルックに貢献しているだけでなく、プレス資料に「(オードレイ・)ディヴァン監督が本作のアスペクト比を1.37:1にしたのは、カメラとアンヌを完全に同期させるため」とあるように、4対3(1.33:1)よりわずかに広いだけの画角により、両脇の視野が限られるぶん観客は被写体の姿に集中し、やがて彼女の視点に、さらには内面に同化していくような感覚になっていく。そしてもちろん、望まない妊娠をするが、中絶が非合法の時代において堕胎の試みが何度も失敗するなか、週が経過するにつれて焦りが募り、そのことで頭が一杯になり視野狭窄に陥る感覚や閉塞感も、このアスペクト比によって強調されている。

ディヴァン監督はこれが長編2作目で、ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞受賞という快挙。2週間早く日本公開された「ファイブ・デビルズ」もレア・ミシウス監督の第2作だし、フランスでは女性監督の躍進が続いている印象で、これも歓迎すべき傾向だ。

【12/13更新】初回投稿時にレイティングに関して誤った記述があったことをお詫びします。当該部分を削除しました。

高森 郁哉
高森 郁哉さんのコメント
2022年12月13日

t0moriさん、ご指摘ありがとうございました。当サイトで確認したつもりでしたが、別の作品のページを見て思い込んだのかもしれません。レビューの当該部分を削除して更新しました。

高森 郁哉
t0moriさんのコメント
2022年12月13日

レイティングについてですが、GではなくR15+のようですよ。

t0mori