「素晴らしかった」笑いのカイブツ 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしかった
オードリーのオールナイトニッポンは1部になってから、すべて聞いていて、ツチヤさんのことは強く印象に残っている。若林さんが「この人と話してみてえな」と語っていて、作家になってところが「地元に帰っちゃいました」くらいの話だった。その内訳が克明に描かれている。若林さんのランドクルーザーまで再現されている。サトミツさんと周囲のスタッフさんをけっこう悪く表現されていて、腹が座っている。
しかしそもそもお笑いの世界は空気がいかに読めるのかが重要なポイントであるので、ツチヤさんは道を選び間違えている。純粋に面白いか否かで、勝負がつくならよかったのだけど、それ以外が弱すぎる。漫画家になるべきだった。空気を読む必要が一切ない。5秒に1回ボケられる訓練を毎日しているようなすごい根性があるなら漫画も絶対描ける。こうして原作小説が映画になるくらいの小説家になっているので、小説もいいのだけど、お笑いではギャグマンガというジャンルがあるように、小説より漫画の方が向いている。小説ではユーモア小説で、お笑いのセンス以外の要素も必要だ。とにかく人に選んでももらわないと成立しない道はきびしい。漫画も小説も勝手に描いて完成させることができる。お笑いなら自分で演じるべきだった。
すぐに人を見下したり、挨拶をしない、仲良くしようとすらしない、空気を悪くするなどご本人の人柄のよくない部分を容赦なく描く。かつての自分を見ているようだ。今は違うので共感はしないけど、まったく責める気持ちにならない。そんな時期もあるよね、と思う。
服を脱いだ時の体が筋トレしているひとの体つきでかっこいい。ツチヤさんはゲソゲソか小太りかどっちかのはずだ。ケンカが全く強くないはずなのにヤクザやチンピラに一歩も引かず怒鳴り散らすのはかっこいい。
こんな人が一緒にバイトで働いていたら、自分も熱心じゃない方なので、叱られるのがツチヤさんになって助かる。