「オトコを捨てに行く旅」グリーン・ナイト せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
オトコを捨てに行く旅
アーサー王のぐうたらな甥ガウェインがクリスマスの晩餐で緑の怪物と首を切りゲームにのってしまったことから、1年後首を切られるために旅に出る話。
A24らしく、無駄に重厚な音楽とアートな画作りで小難しそうに見えるけど、私は「どうしようもない道楽息子を次期継承者にするための身内のお節介」の話として捉えた。
アーサー王の息子は戦争で死んだ?っぽくて、次の継承者が甥しかいないのに毎日堕落した日々をダラダラ過ごしている上に、男性としての機能も不全で次の跡継ぎも危うい、このままガウェインに継がせるのは無理だと判断したアーサー王とその妹の策略が、あのゲームだったのかなと。あの手紙書いてたのガウェインのお母さんだったし。
ガウェインの想定される結末は3つあって、1つは本篇のラストちゃんと覚悟を決めて騎士になる、2つ目は夢オチで提示されたように途中で逃げ帰って王位を継ぐ、3つ目が普通にあっさり首を落とされて死ぬ。どの結末になっても王家にとって悪いことはあまりない気がして、2つ目の夢オチもとりあえず女の子は残ってるから王家の血統は途絶えないし、殺されちゃったら殺されちゃったで正当な理由をつけてちゃんとした別の継承者を探せる。まぁ、ガウェインは最良の選択をできたわけだけども。
ずっと適当に生きてきた男が試されて、最良の選択をする時、ガウェインは男らしさの象徴的な、つけてるとEDが治る魔法の腰巻きを手放す。この瞬間、『指輪物語』よろしく宝物を捨てに旅に出る話だったんだって妙に納得した。英雄譚も持ってないし男としても機能しない男が、一人前の騎士として"男になる"話じゃなくて、"男を捨てる"清々しい話だった。