「ミュージカルと割り切って観れば良い作品」ディア・エヴァン・ハンセン ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
ミュージカルと割り切って観れば良い作品
自己肯定感が低すぎて友達を作れないエヴァン。唯一言葉を交わすジャレッドも、「親が仲良しなだけだ、勘違いするな」。
自分に宛てた励ましの手紙をコナーに取り上げられ、そのコナーが突然自死してしまった為、エヴァンは彼の両親に息子の親友と間違われます。気性が激しく皆に敬遠されていたコナーに友達がいたと喜ぶ母親。兄を見直す妹。エヴァンは否定するきっかけを失って嘘を重ねる羽目に。
本作は曲が爽やかで歌も良いです。ただミュージカルはストーリーが二の次になりがちです。
コナーが荒れてしまった背景が分かりません。ジャレッドも、ギプスに名前くらい書いてくれてもいいのに。
センシティブな内容を朗々と歌い上げるので少し違和感がありました。
エヴァンの嘘は優しさというより、気が弱くて言い出せなかったように見えました。そして、後ろめたさを感じつつも、嘘の証拠作りの為に友人を巻き込んでしまいます。
今の生活を維持できるのは母親のおかげなのに、17歳にもなって「僕には母親らしい母親が居なかった」というのにも共感できないです。
噓がバレて結局謝罪し、再び孤独になりますが、現実ならいじめにつながりかねない事です。針のムシロでしょうに、卒業式でジャレッドの肩に手をまわしたポーズで写真を撮っていたのは驚き、コナーの事を知ろうとしたことも罪滅ぼしのポーズに見えてしまいます。
デレクに送ってもらったコナーの映像を皆に配った件、家族に送るのはもちろん分かります。しかしあれはクスリを断つ施設でのセラピーの一環で、周りにいたのは多分入所者です。皆にコナーを知ってもらう為だとしても、画像処理する必要があるでしょう。
本作のテーマは「君は孤独じゃない、声をあげて」という事のようですが、エヴァンは自業自得だし、アラナもジャレッドも謝った方が良いです。罪を懺悔すれば許されるといった考え方が下敷きにあれば、本作を受け入れられるのでしょうね。
でも、エヴァンの母親の「今回の事もいつかは思い出になる」という趣旨のセリフには共感します。
今は孤独に感じても、それがずっと続くわけじゃない、踏ん張れ、エヴァン。