「歌詞と歌声が心に響く作品」ディア・エヴァン・ハンセン かわさんの映画レビュー(感想・評価)
歌詞と歌声が心に響く作品
映画のタイトルでもある『ディア・エヴァン・ハンセン』
それは、セラピストから課せられた課題であるエヴァンが自身に宛てた手紙の挨拶。
鬱を抱えているエヴァンは「今日はいい日になる」と自分自身への手紙を書いていた。
エヴァンは孤独で友達と呼べる相手もいない。
学校にはたくさん人が居るのに、木から落ちて骨折した左手のギプスにも名前を書いてくれる人は誰もいません。
憧れの女の子にも声をかける勇気もない。
デリバリーの配達員と会話するのも億劫なくらい、自分の世界に閉じこもっています。
ある日、学校で自分宛の手紙を書いていると、コナーに話しかけられました。
気性の荒いコナーに怒鳴られたばかりのエヴァンは戸惑います。
間違って印刷した手紙を取りに行くと、ついてきたコナーが「友達のフリな」と言ってギプスに名前を書いてくれました。
しかし、印刷された手紙に妹の名前を見つけたコナーは突然怒り出しエヴァンの手紙を持ったまま帰ってしまいました。
エヴァンは晒し者にされるのではと焦りますが数日後コナーが亡くなったこと、そしてエヴァンの手紙が遺書だと勘違いされていることを知るのでした。
悲しんでいるコナーの母親の期待を否定できず、コナーとは親友であったと嘘をついてしまいます。
優しい一つの嘘がどんどんと大きなものとなってしまいます。
エヴァンは嘘によって沢山のものを手に入れます。
しかし、嘘は真実にはなり得ません。
エヴァンの嘘に救われた人はたくさんいて、でもそれを美談で終わらせなかったのは好感が持てました。
また人はみんな苦しみを抱えているということを教えてくれる映画だと思います。
一見そうは見えなくても、隠すのが上手い人はたくさんいて、苦しみは人から見て分かりやすいものばかりではない。
だからこそ、エヴァンの言葉に沢山の共感が集まったんだろうと思いました。
憧れや眩しさに目が眩んでも、自分自身の身近にあるものが本当の宝だということもエヴァンはきっと学んだと思います。
嘘がつき通せなくなった時に、ちゃんと前に向かって進んだエヴァンはコナーを通して多くのことを学んだんだなぁと思いました。
またコナーも、エヴァンに声をかけたのも、手紙をたたんでポケットに入れていたのだってエヴァンに共感していたんだろうなと。
もっと時間があれば2人は本当に親友になれたかもしれないと思うと、とても残念だなと思いました。
苦しみを一人で抱え込まないで。とメッセージが込められた映画だなと思いました。
楽しいだけの映画ではありませんが、エヴァンの歌と歌詞に共感と勇気をもらえる映画だと思いました。