「かなりのクセの強さについていけるか?」Zola ゾラ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
かなりのクセの強さについていけるか?
かなり癖のある作品なのは最初から予感していたが、蓋を開けてみると想像以上に癖の強い映画だった。「本当にあった話」などと言われると、それにふさわしい驚きの詰まった意味深なプロットを期待するが、本作はそこらのスリラーに比べると意外とシンプルで直線的。それでいて妙に胸をざわつかせる質感に仕上げているのは、登場するキャラクターの個性、途中暴走するノリ、小鳥のさえずりのように絶え間なく響く電子音、そしてこれがSNS上にアップされた物語であるという事実。それこそ中盤には、同じ出来事を主人公とは別の登場人物の側から見た投稿が登場して、映画が一瞬だけいわゆる「羅生門」のような様相を見せる。また、これだけSNSをフィーチャーしながら、実際のスマホ画面を写すのではなく、自分たちがカメラと真向かいになって言葉を紡ぐのも異色といえば異色か。観客を選ぶタイプの作品だが、他で味わえない感性に貫かれていることは確かだ。
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