ロード・オブ・モンスターズ 地上最大の決戦のレビュー・感想・評価
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キンパンジー vs 土竜トカゲ
またしてもメジャー作品への勝手便乗、モックバスターで訴訟沙汰など悪名高いアライサム作品だが、これだけ堂々とパクるのだから恐れ入る。
ただ、内容は全く別物、30年前に米ソ共同でチンパンジーを乗せて宇宙に放った宇宙船(というより人工衛星のようなポッド)が謎の帰還、そう、コングではなく宇宙ウィルスで肥大化したチンパンジーでした。偽ゴジラの方は着陸した砂漠に棲むアメリカ毒トカゲ、これも宇宙船の汚染物質を舐めて巨大化、なぜかモゲラのように地中を移動。
地上最大の決戦とは随分と大風呂敷を拡げましたが配給のニューセレクトの誇大宣伝は毎度のこと、原題はApe vs. Monster、Apeは類人猿のことなので多少は遠慮を感じます。
冒頭の宇宙ステーションの映像は「シン・宇宙戦争」の使い回し、偽ゴジラなどもTurboSquidという既成のCG映像販売会社の作品らしい、B級映画にはまさに福音、凄い時代になったものです。
宇宙から戻った飛行士が変異するのは古くは1955年のホラー「原子人間」以降おなじみの設定だがトカゲが巨大化するのは「ランペイジ(2018)」のパクリっぽい。これまた東宝映画のパクリなのか怪獣はアンドロメダ星人に操られていると言う。
例によって予算が無いのでCGシーンはほんのわずか、怪獣より驚く表情のアップを繋げたカットの方が長いと言う残念さ。なにより残念なのは、コングがどうみてもまんまチンパンジーなので可愛らしいこと。コングに恋人は付き物だから子供のころから飼育に関わった女性科学者をヒロインにして只管かばいまくります。敵役はこれまたソ連の女科学者、最後は神風特攻という必然性の無いメロドラマ仕立て。だらだら続く人間ドラマの方で尺を稼ぐしかないB級SF映画の宿命なので目の肥えた怪獣ファンには退屈極まりなく映るでしょう・・・。
個人的にはコロナ禍の折、クレジットにもCOVIDコーディネーターのスタッフ名があったのですが劇中では宇宙ウィルスを何の防護もせずに素手で扱う手抜き感、無神経さには腹が立ちました。
それでもこの世界、メジャーには出せない突飛なアイデアで興味を惹く稀有な作品を探す、ニッチなB級映画マニアがいるので成り立っているのでしょう、そんなお宝にいつかはお目にかかりたいものです。
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