劇場公開日 2021年10月15日

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「事実は小説よりも何とやら」THE MOLE(ザ・モール) 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0事実は小説よりも何とやら

2021年10月27日
PCから投稿

以前から噂には聞いていたが、これぞ聞きしに勝る怪作だった。まずもって北欧出身の主人公が見せる”人のよさ”に引き込まれ、彼を裏で操る本作の映画監督(多くの場面で声だけが聞こえる)の存在にも、下手なスパイ映画を見ているようにニヤニヤさせられる。これは緊迫感みなぎるリアル・スパイ・ドキュメンタリーというよりは、「これ本気でやってるの?」とでも突っ込みたくなるようなユルユルな状況設定とイマイチ信用できない登場人物が入り乱れ、いつしか武器取引をめぐる驚きの交渉現場へ足を踏み入れていくシロモノなのだ。蓋を開けるとなんと多くの人と国とが絡まりあって利害関係を生み出していることか。どうやらこの映画の監督と相手側の要人とは、過去作「レッド・チャペル」でも一悶着あった間柄だとか。そんな両者の関係性がどこかル・カレの小説におけるスマイリーとカーラのようで、目に見えないところで仕掛け合う様に思わず笑ってしまった。

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牛津厚信