「ロマンチック × ロマンチック」愛しい人から最後の手紙 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンチック × ロマンチック
最愛なるJへ
1965年の許されぬ恋。お金持ちの婦人と記者の身分差、ありがち。だけど、いつの時代だって人の心を惹きつけ続ける禁じられた恋。安定か冒険か、体裁か情熱か。家族を選ぶことで、このまま世間の目を気にしながら満たされない思いを抱えて、不本意に生きていくのか。決断した直後の……魅力的なカラム・ターナー。怖いのは分かるが僕を信じて。あのとき本当は追った。私書箱を介した恋文、秘密のやり取り。自分が浮気された側だったら絶対最悪なのに、なぜかこうした時代設定などで映画の中で見ると魅惑的に見えるのだろう。仮面夫婦という障壁、だけど一種ファンタジー。だって私達が生きる世界では度々現実が勝って、あんな刺激的・情熱的非日常な冒険に出くわすことすら普通はあまり無いから(スマホもマッチングアプリもSNSも無い時代だとより一層)。おまけに記憶喪失と、語弊を恐れずに言ってしまえば映画的ロマンチックがたくさん込められたパート。別々に歩んだ人生が時を越えて再び交差する。待つよ。
手紙が2つの時代をまたぐ --- 過去から学ぶこと、そして今を生きる。こういうプロットって戦争とかの歴史の悲劇に往々にして結びついているイメージ。一方で失恋の悲しみから、そうした寂しさを埋め合わせるようにすぐに関係を持つ自暴自棄自堕落的もう一人の主人公。いちいち申請しないといけないし、食べ物は持ち込めないなどルールの厳しい記録室周りからもキャラクターの際立った現在パートのエリー役フェリシティ・ジョーンズが観客目線で物語に出会っていく。と言っても自分でも持ち込めないと言われたら捨てるよりその場で口に放り込むだろう。時に神経図太いというか好奇心の赴くまま興味に突き動かされていく。そんな彼女にも出会いが。過去は幻想を生み出して魅了する。挑戦することを恐れたくない。少し鼻にもつくけど、きれいにまとまっている。映画の中の雨もこれまたロマンチック、結果ズルい。タイトル通りロマンチック × ロマンチック = 時間はかかったけど時間通りに見つけた。
あなたのB(ブート)より
Exxx
勝手に関連作『マディソン郡の橋』『エデンより彼方に』『ビフォア・サンライズ』『イルマーレ』『チャーリングクロス街84番地』『ローマの休日』『リスボンに誘われて』ほか多数
「嘘をついた、彼は死んだと」