「隠し通路とカワハギ」レリック 遺物 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
隠し通路とカワハギ
認知症を扱った映画といえば、最近ではアンソニー・ホプキンスの『ファーザー』が異色で楽しめた。今作では奇をてらった心理劇ではなく、久しぶりに会う祖母が認知症によって変貌していく苦悩をケイとサムの視点で描いていた。
認知症による症状だけをとっても、徘徊や忘却といった一般的な症状に加えて人を泥棒扱いして怒りっぽくなる様子がとてもリアルだった。施設に入れようと試みる娘のケイや、理解しようとするも困惑する孫のサム。隣人との確執も絶妙だった。
ところが、家が広いせいか謎が多い。徐々に黒かびまみれになっていく壁だとか、終盤にサムが隠し通路を発見して恐怖に慄いてしまうシーンがとてもいい。観念的なものかもしれないけど、すべては祖母の心象風景によるものか・・・そこは見る者の自由。だだっ広い屋敷に一人で暮らさせてしまった家族の自責の念。そしてDNAを受け継いだかのように黒いアザが浮き出てしまうといった、普遍的なものまで見えてくる。
『ファーザー』でさえもホラーっぽく感じられたんだし、家族に認知症患者がいることで、少なからず恐怖というものは存在するもんだと訴えてきてるような気がした。
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