劇場公開日 2022年3月4日

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「【共感性】撮影 × テーマ = 第三者だから気づけたり功を奏すこともある?ウイルスや細菌のように感染する、音と記憶の旅へと誘われて」MEMORIA メモリア とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【共感性】撮影 × テーマ = 第三者だから気づけたり功を奏すこともある?ウイルスや細菌のように感染する、音と記憶の旅へと誘われて

2022年9月2日
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"妄想の深淵"を彷徨い歩いた --- 異国の地で、自分だけに聞こえる爆発のような音の正体を探っていく内にさらに味わう奇妙な不思議体験…。だけど、それらは不安にさせられるというよりも、なんだか暖かい。そんな不思議な魅力に魅了され惹き込まれた。知る由もない他の人の記憶を感じ取れる、タイトルに偽りなしな深い音と記憶(を巡る)の旅を追体験する。
『ブンミおじさんの森』アピチャートポン・ウィーラセータクン監督 × ティルダ・スウィントン主演 = 監督の英語になっても、スペイン語を話しても言語で変わることのない監督らしさ。シンプルだからこそ、あれこれ考える余地が広がっていて難しい。時の忙しなさからしばし解き放たれたようなコロンビアへのリアルな訪問のトーン空気。しっかりとそこに暮らす生活を垣間見るように感じられた。だけど何処か少し異世界を感じるようなファンタジックさも兼ね備えている、物静かなサプライズ。
主人公含む特定のものに寄ることなく一歩引いた場所から、定点での撮影。一見淡々としながら情感豊かとでも言おうか、空間の切り取り方が時に絵画のようですらあって美しかった。ときにワンシーンワンカットみたいな長回し等、個人的には『ホモ・サピエンスの涙』をタイムリーに見ていたこともあって少しロイ・アンダーソン作品思い出した人間の営み。この監督らしさを語れるほど知らないけど、少なくとも本作に関しては、画と同じくらい音も印象的だったし、エンドロールでも雷雨が鳴っていた。
"世界の美しさを理解する" --- 昔があるから今がある。音探しの自分探しかと思いきや人との出逢い。説明するのは難しい。君は俺の記憶を読んでる、俺はハードディスクで君はアンテナ(電波仲介役?)。自らが街や自然、世界の一部であると理解するように、あの人にもこの人にも、まだ見ぬどこかの誰かにも記憶というそれまで(生きて)来た道程があることを忘れないで。見逃すには惜しいものもあって、至るところに物語はある。そう、菌のように。理由探すのなんて後からでもいい、小さなことこそ大事。

P.S. ここ2日ろくに眠れていないこともあって見始めてしばらくしたら少し眠気がきたけど、途中でうたた寝することなくどうにか完走。あと、そういうコンディションもあったのか、本作の長めな本編尺をあまり感じさせられず、比較的さっと見られた。それはそれでよかったけど、今度は目がパチっと冴えている状態でじっくりと見直したいな

とぽとぽ