劇場公開日 2022年3月4日

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「映画館でゆっくり向き合う」MEMORIA メモリア Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画館でゆっくり向き合う

2022年3月21日
iPhoneアプリから投稿

感染するのはウィルスや菌だけではない。人間の観念や記憶もまた伝染し堆積する。ネットの網が伝播するように、風と水の惑星である地球において、太古の昔からウィルスや菌がその役目を果たしてきたのか。

頭蓋骨に響く轟音を「地球の核から出るような音」と説明していた。巨大な堆積物である地球と、同じ物質である我々人間の「内なる核」から出る音か。
古代人は、穿頭術によって意識を高め神秘的な力や幸福感を得ていたのかもしれない。個人の記憶、場所の記憶、集合意識からの解脱を試みたのかも。

前半部分はジェシカの物質世界での夢か。夢の中を彷徨うような印象だった。ここでのエルナンはセクシーで魅力的な男性だった。中年女が戸惑いながらも理想とする男性像のようだった。

車を運転しながら徐々にスピードが加速したシーンからアナザーワールドへ移行。
こちらのエルナンは本来の自分へと導く存在のようだった。魚の鱗を取るエルナンは、魚型の宇宙船でやって来た宇宙人か。
岩や石やコンクリートは記憶の波動を吸収しており、エルナンはその記憶を保存するハードディスク。
自家製の酒によってアンテナの精度が上がったジェシカがそれを感知する。
暴力に満ちた古い地球の記憶を共有した二人は離脱する。

死とは、物質世界を味わった自分が、自分ではない「本来の自分」になることなのかもしれない。

これでもかと言うほどの長回し。遠雷と水の音。私はじっくりと「音」と「映像」に向き合えた。

Raspberry