「題名どおりの映画でした。」MEMORIA メモリア いなかびとさんの映画レビュー(感想・評価)
題名どおりの映画でした。
独身だった頃、仕事が終わった後に、金曜日の夜よく映画鑑賞した。もう、30年以上も前のことだ。
用事があってどうしても都合がつかず、午後8時半からの上映会に出かけた。見終わって、午後十一時を回っている。通常なら、もう就寝している時刻だ。観客は私を含め6名。私以外は二十代の若者たちで、夜こんなおじいさんは珍しいだろう。
視点が意表をついていて、今まで全く気づかなかった。二十世紀に入り、エジソンが蓄音器を発明して始めて、人類は音による記憶(メモリア)が可能となった。
それまでは絵画しかなかった。ラスコーの動物絵は紀元前の絵だ。音による人類の歴史または自然の歴史をたどる映画だった。故に映像ではなくが自然の音や人間の生活音がメインである。また、音が時々カットされ、映像だけになる。音が無い世界を体験させる意図かと思った。
雨音、川の流れなど水の音がよく使われる。水は生命の誕生や保持に欠かせないものだから、生の象徴だろう。一方、古代人の人骨の発掘や何代にも渡って転生し人類最古の音の記憶を持つ男の寝姿が死体そのものに見えるのは、死の象徴かと感じた。生と死の繰り返しが歴史となる。
しかしながら、あの意味不明の衝突音或いは激突音の正体が、「未知との遭遇」だなんて思いもしなかった。てっきり、銃の発射音、殺害目的で家に押し入ろうとドアと叩く音、或いは恐竜・マンモスの足音と想像していました。
余談だが、グスタフ・マーラーがあともうちょっと長生きしてくれたら、彼の指揮による自作曲の録音が聞けたかもしれない。残念だ。
コメントする