「スパゲティコードと言うほど複雑ではないが、あっさり風味の“絡み”が今様かも」スパゲティコード・ラブ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
スパゲティコードと言うほど複雑ではないが、あっさり風味の“絡み”が今様かも
「東京をさまよう13人の若者たちの行動が複雑に絡み合い」との宣伝文句があるが、その中には元彼・元カノの仲だったり、SNSで繋がっていたりする関係性がそもそもあり、しかもその2~3人の範囲で関係が変化する程度の展開。なので、プログラミング分野の業界用語である「スパゲティコード」を冠した割にはさして複雑ではなく、あっさりした絡みの群像劇という趣だ。
MVやCMでキャリアを築いてきた映像クリエイター・丸山健志の長編映画監督デビュー作だそうで、MONDO GROSSOがボーカルに満島ひかりを起用した「ラビリンス」のMVを丸山が作った縁からだろう、満島も短い時間ながら出演して鮮烈な印象を残している。撮影監督は岩井俊二監督作品を多数手がけ、やはりMVやCMの仕事も多い神戸千木が務めていて、この2人の組み合わせはポップでスタイリッシュ、短めのカットでつなぐ点描のような映像表現に合うようだ。
悩み、挫折、孤独を抱えた若者たちが、他者とのつながりで前向きになれたり、一歩先に進めたりする。難解なパズルがすっきり解けるような爽快感はないが、あっさりしたポジティブさが今の若い世代には合うのかもしれない。