「あなたの、そして私の夢が走ります」ドリーム・ホース ますぞーさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたの、そして私の夢が走ります
共同馬主
馬主(競走馬のオーナー)のうち
競走馬の代金・飼育費等を複数人で
分割しその分け方は最大数百口に分かれ
決して富裕層でなくとも競走馬を所有
できる制度(競走馬価格によるが)
日本では共同馬主クラブが
購入した競走馬に募集をかけ
事務手続きを代行して広く出資者を
募る方式が普及しており
かつては個人馬主の
良血の強い馬に敵うことは
難しかったものの
近年では内国産馬の隆盛に伴い
三冠馬やビッグレースを勝つ
事も珍しくない
2022年の有馬記念を制した
イクイノックス号も
一口8万円で500口に
分けられた共同馬主の馬である
この作品は
ウェールズ北西部の端っこ
高齢化も進むヴァレーの夫妻が
一念発起で競走馬を育成
共同オーナーを村から募り
もう一度人生に張り合いを持ち
最高の体験をもたらした
ドリームアライアンス号の物語
レース鳩で全国優勝した
事もあるジャネットは
今ではスーパーと自宅を
往復する毎日
テレビを眺める夫ブライアン
そして夫と折り合いが悪く
老々介護状態で
別居している両親
そんな日々を送っていた
ある日夜勤先のパブで
税理士ハワードが話している
競走馬の話に惹き込まれ
繁殖牝馬を買い付け
種付けをして産まれた
子供を村の人々で
共同所有するという
突拍子もない計画を
立てます
夫も周囲も税理士も
反対しますが
「朝起きた時に何か違う
張り合いが欲しい」と言う
ジャネットに皆惹き込まれ
一人毎月40ポンドの出資で
競走馬育成計画は実行
共同馬主で家庭が崩壊
しかけた経験がある
ハワードはそう簡単に
勝てるものではないと
釘を刺しつつも
馬好きがどうしても
止められず奥さんに内緒で
こっそり組合の財務を担当
300ポンドの肌馬に
アメリカの長距離レースで
活躍したビエンビエン号の種
3000ポンドを付け
仔馬は産まれたものの
肌馬は引き換えに死んで
しまいます
希望の光となった仔馬に
共同オーナー達は協議の末
ドリームアライアンス(夢の連合)
と名付けられます
ドリームはすくすく育ち
半ば押しかけ同然で
地元の評判のトレーナーに
掛け合い調教管理の依頼も
取付けいよいよレースデビュー
オーナー達は応援団となって
ウェールズの田舎から
競馬場に乗り込みます
デビュー戦は大出遅れも
ありながら最後詰めて4着
それでも一同は大喜び
ドリームは徐々に3着2着
と成績を上げついに
大レースで大馬主の本命馬を
負かしてドリームは
勝利しついに組合の資金は
10万ポンドを超え
ヴァレーの希望と新聞にも
取り上げられます
ハワードはそんな躍進を
続けるドリームに
自分の父が騎手を目指して
いたのに挫折したことを
聞かされていたことを
ジャネットに打ち明け
今最高に夢が叶っていると
とうとう勤め先をやめて
税理士事務所を立ち上げて
しまいます
大馬主が購買を持ち掛けると
ジャネットは拒否しますが
共同オーナーからは勝手に
決めるなと批判もされて
しまいます
この辺が共同馬主の
むつかしいところでも
あります
(定款はあるんでしょうけど)
夫ブライアンも
ドリームが活躍するごとに
どんどん手元を離れていく
事に寂しさを覚えまた
テレビを眺める日々に
戻りつつありました
そしてついに
エイントリーの大レース
(恐らく英国で一番人気がある
グランドナショナル競争でしょう)
調教師は登録を決意
ジャネットは両親にも
知らせますが両親はそっけなく
ジャネットは落胆も怒りも
抱えながらその場を後にします
そしてレース当日
ドリームはいい感じにレースを
進めていましたが向こう正面で
突然ドリームがいなくなり
障害で転倒しけん断裂を起こし
転倒しているというまさかの
知らせ・・
競走馬は立てなくなれば
歩けないで苦しむより
安楽死処分を取ることが
ありジャネットらは決断を
迫られます
治療を選択した場合
積み立ててあった資金は
全部使われます
どうするかをオーナーで
決めますがジャネットは
ドリームがくれた希望に
我々は何も返せていない
今ここでドリームを助ける
べきだと訴えると
言い返せるものは誰も
いませんでした
ドリームは手術を行い
なんとか一命をとりとめますが
競走馬への復帰は難しいと判断
ジャネットはそれでも良かったと
共同オーナーたちとともに
以前の暮らしに戻ります
ただハワードはドリームの
腱を治すための方法として
幹細胞治療を見つけていました
間もなくジャネットの父も
亡くなりますが娘の前では
そっけなかった父も
実はドリームの新聞記事は皆
スクラップして取ってあった
事を知りジャネットは
慟哭します
幹細胞治療は身体の他所から
取り出した細胞から損傷した
組織を体内で再生させる治療法で
日本でもカネヒキリ号が同種の
治療で競争能力を取り戻し
大レースを勝ったことが
あります
そして数か月後
ハワードは調教師から連絡を
もらいジャネットらとトレセンに
向かうとそこには元気に走る
ドリームの姿が!
調教師はレースにも使えると
言いますが大怪我の後なので
復帰の可否は共同オーナーで
話し合ってと告げます
ジャネットは走らせたくない
と弱気に訴えますが
オーナー達は走るために
産まれてきたんだろうと
復帰を支持します
お婆さんの「Live to Race」
という言葉が印象的でした
受け入れきれないジャネットは
場を離れますが
ブライアンにドリームは
走りたい目をしていたと
言われ復帰をひとまず許可
使うレースは地元の
ウェルシュ・クラシック
地元で復帰戦を迎えるドリームに
ヴァレーの村も皆応援ムード
ブックメーカーも大混雑
ウェールズ国歌を皆で歌い
一丸でドリームを応援します
ただジャネットだけは
また怪我をしてしまわないか
不安で胸がつぶれそうです
馬主の気持ちってほんとこうです
勝つとか負けるとかより
何着でもいいから無事に回って
きてほしいという気持ちに
なってしまうものです(体験談)
一口馬主やってる人には
ここはほんと共感できるはず
ドリームは力強く障害を飛越し
直線で鋭く抜き去って
復帰戦の地元レースを凱旋勝利で
飾ってしまいます
くれぐれもこれは実話です
この映画はあまりこれまで
映像で見ることがなかった
英国の競馬場の雰囲気がすごくいい
ギャンブルと言ってしまえば
それまでな競馬ですが
いろんな人の思いを背負って
馬が走っている姿は
心を打つものです
「シービスケット」
「セクレタリアト/奇跡のサラブレッド」
「ライドライクアガール」
競馬の映画って良作が
多いんですよね
今作もその中に間違いなく
入ると思います
新年一発目
良い映画が観られました