オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険のレビュー・感想・評価
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2人組の自転車旅案件。ここ10年の撮影機材のチープ化、進化に驚く
2011年に、本作同様2人で世界を自転車で旅する「僕たちのバイシクルロード」ってドキュメンタリーの配給を手伝ったことがあります。だから、このオーストリアからオーストラリアへの2人の自転車旅案件は興味津々でした。
まず、率直な感想は、「機材のチープ化ってこんなにも進んだのか」というもの。手持ちカメラにジンバル、赤外線カメラ、ドローン、もちろんスマホとかなり多様な機材を携帯してます。しかも、恐らく機材費は2人合わせて50万円ぐらいに収まってるんじゃないですかね(自転車除く)。凄い時代になりましたね。誰でも長編映画が作れるわ。
内容的には、パキスタンのシークエンスが最高でした。警察職員によるカッワーリー。あと、インドの無料の食堂は「聖者たちの食卓」の黄金寺院ですかね。2人の行程は、カザフスタン行ったり、ネパール行ったりと、「僕たちのバイシクルロード」とはまた全然違うルートで面白かった。いずれにしても、完全に2人だけで撮影してるのが凄い。ドローンの空撮も上手いね。
できないと思うこと
イスラム過激派やタリバンが支配するパキスタン。戦争が始まる前のロシア。軍事政権下のミャンマー。普通に旅行するだけでも何が起こるかわからない地域を自転車で横断する。酸素の薄い高地から赤熱の砂漠や荒野まで越える旅。簡単に想像するだけで命の危険と隣り合わせであることは明らか。
「できない」と思えばそれまでのこと。「できるかもしれない」そう考えたからこそ全ては始まった。
映画の終盤、とっくに限界を越えたドミニクが、全て失敗だと嘆き、もうやめると言いながらそれでも自転車に乗り走り出す。先に走っていたアンディは黙ってその再会を受け入れる。言葉はなくとも通じ合う2人と美しい風景がドローン映像で映し出される。この映画のハイライトだ。
「どんなに行き詰まろうとも解決法があることを学んだ。止めるのも続けるのも結局は本人次第。」映画の終わり、ドミニクはこんな言葉で締めた。
人生は旅だという言葉をよく聞くが、自分の世界に引きこもり、安全な場所で死ぬのを待っているような人生を送るのも、未知の世界に飛び出して、死ぬような思いをしながら生きる喜びを味わい尽くすのも、全ては自分で決めていること。死んでしまってはどうしようもないんだけれど、死んだような目をして安全な場所で生きる自分には目が覚める思いをした素敵な映画だった。
羨ましすぎるユーラシア大陸横断
映画とは何かを考えさせられた
ドローンの偉力 「一人称」とはちがう爽やかさ映画
うまくいかないところがリアル
「オーストリアからオーストラリアへ」という“駄洒落”企画を実現しようとしたが、なかなか上手くいかず、苦闘する2人だけのドキュメンタリー。
自転車ツーリングをやった人間なら分かるはずだが、あの荷物で坂を登るのは至難だが、そういう当たり前の苦労には、何も触れないところが、さわやかで好感がもてる作品である。
最大の目的は“ユーラシア横断”である。
ロシア、カザフスタン、中国の新疆、パキスタン、インド、ネパール、タイ、シンガポール、オーストラリア。
すべて自転車で敢行したいところだったが、膝の炎症やビザの有効期限、入国不可など、トラブルに見舞われ、車や空路での移動を強いられる。
すべて自転車じゃないと不満をもつ向きもあるだろうが、自分はトラブルがむしろリアルで面白かった。
88分で足りるはずはない、というのが観る前の疑問だった。
カザフスタンでのおもてなし、パキスタンでの警察の護衛、インドの混沌、オーストラリアの蚊など、実際、映像として取り上げられるのは、ほんのわずかだ。
最初は明るいトーンで始まるが、疲労とトラブルで、どんどん暗くなっていく。
最後は“仲間割れ”しかけたり、楽しい作品で観て良かったが、1800円払って観る映画ではないかもしれない。
<EUフィルムデーズ(@国立映画アーカイブ)にて鑑賞>
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