「不毛な闘い」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
不毛な闘い
まず、個人的にはいつも辟易とさせられる「マーベルの他のシリーズとの関連性」はかなり薄めですが、少なくとも前作を確認してからの観賞は必須だと思います。
その上での感想としては、良い意味でも悪い意味でも、あまり気持ちの良い話ではなかったなぁ、と。
この二者が戦う必要なんて本来はなかったはずなのに。
もちろんそのつもりはなかったにせよ、結果として原因はむしろワカンダの方(前作ラストで明かした国の方針転換、そしてまた閉鎖的な政策に立ち返っていく)にあり、同じヴィブラニウムの技術を用いる者同士、歩み寄る選択もできたはずなのに。
前の王であるティ・チャラを失った理由の詳細は明かされないが、そのことで女王も王女も冷静な判断ができないでいる。
深く葛藤する雰囲気もあまり感じられなかった。
で、もちろんこの対立の虚しさとさを分かって作り手も進めているからこそ、最後の大バトルシーンもずっとどこか悲壮感を含んだ音楽が流れている。
そして最後、結局両者は本質的な理解には及ばず、終戦。
そんな不毛なやり取りをラストまで見せる作品としては、この上映時間はやはり長すぎる。
雰囲気がずっと悪いので、オコエ関連のコメディシーンもまったく機能していないし。
ピブラニウムとかキモヨ・ビーズの新たな活用とか、SF的な発展も感じられなかったし。
前作が、音楽や美術・衣装も素晴らしかったのに、本作はその辺りかバッとしない…というか、暗くてよく見えないシーンも多かった。
そしていつものエンドロールに挿入されるエピソード。
結局あの子も(わざわざ国外で秘密裏に育てているのに、本人は自分の出自を知っているということは)「悲しき血の呪縛」から逃れることはできないというメッセージとして見ると、もう悲壮感のみで2時間40分突っ走ったんだなぁ、と思えてしまう。
チャドウィック・ボーズマンの死を悼む意図は分かるが、作品として誰にも感情移入できず、胸苦しさだけをずっと感じてしまった。