「とても良く出来ているが…」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)
とても良く出来ているが…
まずもって言っておかねばならないのは、基本的にはとても良く出来た映画であること。
美術、衣裳、撮影、音楽は非常によく出来ている。特に音楽はヒップホップやレゲエのみならずサリフ・ケイタやユッスー・ンドゥール等のアフリカ現代ポップスの成果も踏まえたとてもモダンなものになっており素晴らしい。
一方でストーリーとしては、ティ・チャラ亡き後の多くの役割を女性が担うという素晴らしい展開はあるものの、どうしても許容できないものがあったのも確か。
それは、何故ワカンダがタロカンと闘わなければならないのか、ということ。君たちは握手をすべきなのであって、殴り合うべきではないのだ…
南米への西欧諸国の侵略・植民地化から逃れる形で成立した海底王国タロカンと、アフリカへの西欧諸国の侵略を逃れて秘密国家となったワカンダは、本来手に手を取り合ってゆくべき二卵性の双子のような国なのに、闘うことになってしまうのはあまりにも悲しい現実の歴史そのままではないか。
特に冒頭、西欧諸国のエゴを見せつける形での整理があった以上、制作陣もその辺りには意識的であったはずだが、現実がそうだったからと言って、それをまた映画においてもなぞらざるを得ないとするなら、やはりそれは悲しすぎる…
シュリの幻覚にキルモンガーが出てきたように、シュリの選択は最後の最後に翻意するまで間違っていたのであって、やはりどこかで誰かが彼女を導くべきだったのではないか、と考えざるを得ない。ティ・チャラにしかそれは出来なかったのだとしても。
しかしこれほどの重荷をシュリ一人に負わせるべきなのかも悩ましいところだが、アイアンハートとの友情を育むだろうというところに期待したい。
シュリ、がんばれ…