「救いなど無い、圧倒的強者こそ正義。」劇場版「オーバーロード」聖王国編 ぶちねこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0救いなど無い、圧倒的強者こそ正義。

2024年9月20日
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鑑賞方法:映画館

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最初に、私は今作の原作は未読です。TVシリーズは第1〜4シーズンを視聴済です。なので原作最新話までの現状や判明している設定の把握はしていません。そのような状態の人間が今作の劇場版を観賞した感想となります。

TVシリーズにおいても、今作においても、この「オーバーロード」という作品において「勧善懲悪に対するカタルシス」というものは一切得られません。所謂「スカッとする」というやつです(それぞれに作品の見方があるのでそういったものが得られている人もいるでしょうがあくまで私の感覚です)。では面白くないのか、つまらないのか、と言われればそういう事でもないのです。悪しき者が、心の醜い者が、狡猾で利己的な者が粛清され、そうでない者は救われるという展開にはならないんです。人によっては「エグい」「見るのキツい」といった感想を抱くような描写が容赦なく描かれ、そこには正しい者への救済などありません。主人公とその守護者達はこのオーバーロードという作品内であまりにも強力で圧倒的な力を誇りますが、その力は善悪の観点から行使されるわけではなく、あくまで自らの利益第一で使われるんですね(ある立場の人間からすれば過程はどうあれその行為が救いとなり得ている点は面白い所ではあります)。世の中には作品に対して最終的にはハッピーエンドを望む人達が一定数存在していて、他方ではそういったものを「綺麗事」「ご都合主義」と切り捨てる人達もいます。オーバーロードの世界ではそのような綺麗事はまかり通る事もなく、作品を通してこの世の現実を突きつけられているような感覚に陥ります。表層は世に溢れる「主人公が無双する異世界転生モノ」でありながらどこか異質な匂いのする不思議な魅力のある作品。これが先程の面白くないのか、つまらないのか、に対するアンサーとなるのでしょうか。この作品の楽しみ方は人それぞれだと思います。各キャラクター、派閥、勢力の視点に立って感情移入するも良し、私のようにアインズ達主人公勢を一種の「災害」だと捉え、それに為す術なく翻弄されていく人間達を俯瞰的に観測する事に愉悦を見出すも良し(性格悪い見方?)。各々で各々なりの楽しみ方を見つけていくのが良いのではないでしょうか。

最後に‥観賞特典の小冊子は前後編に分かれていて、期間を分けてそれぞれ前編後編を配布するといった特典商法と言われても致し方ない仕様。コンプ癖のある私には辛い‥。最早特典配布が当たり前になっている昨今の現状、数字にも勿論影響あるのでしょうが考え物ですね〜。

ぶちねこ