劇場公開日 2021年7月16日

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「70‘sアクションへの懐かしさがほのかに薫る地味ながら爽やかなB級サスペンスの佳作」ファイナル・プラン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.070‘sアクションへの懐かしさがほのかに薫る地味ながら爽やかなB級サスペンスの佳作

2021年7月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

退役軍人のトム・カーターは凄腕の爆破強盗。全く手がかりを残さずに奪った現金は9百万ドルに達していた。トムは奪った現金を貸し倉庫に隠していたがそこで受付をしていたアニーと出会い人生をやり直すことを決意、9百万ドル全額を返金する代わりに面会条件の緩い刑務所に服役できるようFBIに取引を持ちかける。FBIのベイカー捜査官はその余りにも突飛な取引を毎日のように寄せられる狂言の一つに過ぎないと判断し、部下のニベンスとホールに丸投げするが、トムの話が狂言ではないと確信した二人は9百万ドルを強奪しようとする。

派手さのカケラもない渋いB級サスペンスで、半世紀前ならばチャールズ・ブロンソンとジル・アイアランドが共演しそうな小品。運命の恋に目覚めたトムは不動産の下見も不法侵入で実施する実直なのに破天荒なキャラなので自首しようとしているのに信じてもらえないという微笑ましさがそこはかと薫ります。意外と複層的なストーリーで、トムを保護しようとするベイカーとマイヤーズがメインストーリーとは別軸で地味に活躍するので退屈しません。数々の銀行を突破した爆破強盗なので爆弾をうまく使ってワビサビを弁えた反撃に出ますが派手さがないのにしっかり爽やか、鼻の奥が懐かしさでツンとするような佳作。

少ない出番でしっかり印象を残すベイカー捜査官を演じるのはロバート・パトリック。T-1000の印象に何十年も苛まれ続けたかと思いますが、ようやく抜け出したかのような血の通った演技が印象的。ちなみにニベンスに絆されて9百万ドル強奪に加担するホールを演じているのが『イン・ザ・ハイツ』のアンソニー・ラモス、優柔不断ゆえに相応の因果応報に見舞われるキャラを堅実に演じています。

よね