「タイトルなし(ネタバレ)」草の響き maduさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
原作を先に読んでいたので、改変部分が非常に受け入れ難くかなり観るのがキツかった。
改変部分は、佐藤泰志本人の人生を取り込んだものだと分かって多少納得しつつ…
たしかに原作は、主人公と同じ様に自律神経失調症と診断され医者の勧めで走り始めた作者本人そのものが主人公の様な話だが、原作は創作物だからこその良さが満ち溢れていて
心を病んだ主人公が暴走族の少年と、寂しい魂が吸い寄せられるように共鳴し、去っていくただそれだけ。
生きることの苦しさも、生きづらさが、属性や環境が違えども誰もが抱えうるもので
登場人物たちは男性が中心だとしても、性差や属性を剥ぎ取った魂の叫びの様な純度があったのに、
映像化されたこの作品は、主人公は結婚していて、投薬治療をしているにも関わらず、子供を作り、人生の袋小路に更に迷いこむ。
佐藤泰志自身の人生を更に現実的に描いているのかもしれないが、それだから良いとは限らないんだなと思った。
確かに、佐藤泰志自身は自分の精神がままならないまま子供をつくり、自分の人生を生きた分周りに迷惑をかけたかもしれないが、
女性として、この映画をみると
女性はケア要因、男達は弱みを見せ合い魂の共鳴をし、儚げだが魂の花火を打ち上げ美しく散っていく。(男性同士の内省の吐露や、弱みの見せ合いを描いているのは大変良いと思うが)
奈緒さんの、被害者面した演技もきつい。(俳優さんの演技への批判とゆうより作り手の意図が嫌だとゆう気持ち)もちろん家父長的な日本社会で、男性が家を支え良い家庭を築くことへのプレッシャーがあるのは大前提だけど、そのケア要因としての役割を押し付けられる属性の性別である女性が見てられない。ほんとにみるのキツかった。東出の演技も良いし、制作者の意図を上手く映像化されているのかもしれない。
でも私は原作の持っていた、生きるのが辛い、苦しい人間のそれでもなんとか生きようとしている者の純粋な心の叫びみたいな、心に暗い物を抱えている人全てが照射範囲みたいな普遍性が、現実的に描いたことで失われて自分のもつ女性とゆう特性のせいで追い出されたような気持ちになってしまった。
最後に夫を捨てる決断をして、東京に戻る決断をしたことで希望があるように描かれているが、その程度ではちょっとカバーでない。(私の気持ちが)
あと映像化に当たって、時代感の調整がされ
暴走族→スケボー少年などになっているが
その分、心のバランスを失った人間に対しての周囲の人間の行動が全時代的に感じてしまうのも違和感ある。
この状態で子供作るな、作っておいて子供嬉しくないの?とか聞くな避妊感覚どうなっているんだ。
仕事ちゃんとしろって追い討ちする父親、
幸せな洗濯〜とかきつい。
妊娠中に自殺未遂すんなクソ野郎。
(まぁ佐藤泰志がそうゆう人生だからしょうがないが)
原作は短く、映像化するにあたって
オリジナル要素を追加しなければならないのは分かっているし、原作者の人生を上手く繋げて描いているのかもしれないが、現実的に描いた分失われた物が多すぎる。