「【ギリシャから、なんか良い話】」テーラー 人生の仕立て屋 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【ギリシャから、なんか良い話】
ヨーロッパ危機、場合によっては、ギリシャ危機と言われたあたりで、ギリシャが経済的な危機に瀕していた頃に時代設定した物語だ。
今は随分、景気も持ち直して良くなったと思うけど、当時は社会保障費の大幅削減とか本当に大変だったのだと思う。
一部にはアテネ・オリンピックなんか開催して金使い過ぎたとか言われていたけど、リーマンショックなんかの悪影響もあって、イタリアやスペイン、ポルトガル、アイルランドなんかも似たような状況で、豊満財政は本当に国民の利益にならないと思った。
(以下ネタバレ)
店舗を構えた紳士服のテーラーから、発想転換して、移動式テーラー、婦人服の仕立て、そして、最後にウェディングドレスの仕立て屋に展開していく様は、もし事実で有れば、ちょっとしたビジネスのケーススタディとして取り上げられても良さそうな話だ。
日本では、店舗を構えずキッチンカーで営業するお店も多くなってるように思うので、ちょっと似てるかもしれない。
コストは安いし合理的だ。
無口で几帳面、朴訥としたニコの人柄も魅力的に映る。
父親と共同経営で、従属的だったのが、自立して、だんだん表情が自信に満ちていくように見えるのは、僕だけだろうか。
ロンドンで勉強していた頃、同じコースにギリシャ人の富豪の息子がいた。
ゴージャスな雰囲気で、家にはフィリピン人のメイドがいて、部屋も食べ物も与えているので、給料は払わないと言っているのを聞いて、ギリシャは差別主義なのかと腹も立ったが、当時、唯一の楽しみだった読書で、村上春樹さんのギリシャ滞在体験記の「遠い太鼓」は本当に面白くて、いつかギリシャに行ってみたいと、興味の方が、腹立たしさを上回るようになった。
それで、念願かなって、アテネ・オリンピックの少し後ぐらいにギリシャを旅行したが、やっぱり良いところで、日差しがキラキラ眩しくて、でも、リーマンショックを経て、ギリシャ危機が起こって、けっこうショックだったことも思い出す。
なんか、ギリシャ映画って珍しいよね。
切なくて、ユーモアもあって、笑えて、そして、優しさを感じる作品だった。