「好奇心くすぐる美術ドキュメンタリー」レンブラントは誰の手に 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
好奇心くすぐる美術ドキュメンタリー
非常に好奇心をくすぐるドキュメンタリー作品だ。ホーンダイク監督は単に美術品にフォーカスするのみならず、そこを切り口として各人の事情や背景を描き、その先に我々の生きる時代そのものを映し出す。思えば同監督は「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」(08)で、”あるべき美術館の姿”を巡って多様な意見が噴出する中、誰もが全く譲歩せず、改修工事が一向に終焉を迎えないという、民主主義に関わる極めて今日的なジレンマを浮き彫りにした。レンブラント絵画をめぐる本作も構造はどこか似ている。美術界を騒がせた”名画の発見”をめぐる顛末にとどまらず、様々な人々を通じて”所有”という行為をじっくり見つめる。その間、ホーンダイク監督は自らがカメラ前に映り込むことなく、登場人物を批判することもなく、ただ真摯にフッテージを重ねるのみ。解釈や考察を観客一人一人の胸に委ね、自らは時代の観察者に徹しようとする姿勢に感銘を覚えた。
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