「不法移民と警官のゲリラ戦争を描く現代のデンマーク映画」アンコントロール 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
不法移民と警官のゲリラ戦争を描く現代のデンマーク映画
2020年(デンマーク)
秀作だと思いました。
移民居住区はゲリラ戦の戦地と変わります。
不法移民居住区(治安が最悪な上に、警官に悪意剥き出し)
警官も最悪なら、移民たちも最悪。
キッカケは、移民の青年が受けた職務質問。
不法に拘束された青年は、警官の暴力で死亡したのです。
デンマークに住む移民はパキスタン人らしいのだが、個人商店の商品を公然と盗んで、
なんとも思わないような連中だし、
取り締まる警官だって、なんの罪のない少年アモスを、人質代わりに連れ回す。
アモスは【人間の盾】にされている。
(でもそんなこと、アモスにしても慣れっこなのだ)
「レ・ミゼラブル」を観た方ならば、ご存知かと思いますが、
移民の鬱積した不満が爆発して警官に向けられた時、
移民の居住区は無法地帯と化し、もう、暴徒化した移民との戦争になる。
警官の味合う恐怖がリアルだ。
筋金入りのベテラン警官のジェンス。
仲間の警官の不法行為を証言するか迷っている良い警官に見える若手のマイク。
この警官コンビも善と悪→そんな簡単な構図が途中の出来事で脆くも壊れて、
反転する。
ジリジリと追い詰められていく警官。
高所からの発砲や火炎瓶投げつけられ負傷するジェンス。
助けの来ない移民居住区・・・迷路のような地区・・・移民は高層アパートから、
スマホで実況している。
緊迫の一夜が炙り出した【憎しみの連鎖】
そもそも、ここまで移民たちがヒートアップしたのは、罪もない移民が警官の職質から、
暴力を受けて死んだから・・・。
移民と、警官。
そのどちらもが、【恐怖】に支配されている。
着地点は見えない・・
永遠に分かり合えない・・・
と、諦めかけた時、一条の光が見えるのだ。
憎しみを持つものばかりではない。
その描写に救われる。
娯楽作ではまったくない。
しかし緊張とスリルは半端ない秀作だと思います。