「観ていたのはVRとは・・」アーカイヴ odeoonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
観ていたのはVRとは・・
なんとなく「エクス・マキナ(2016)」を思わせるシチュエーションだが本作の主人公のジョージの動機は事故死した身重の妻ジュールをアンドロイドとして蘇させること一点にありメロドラマのような展開。
外観を似せるラブドール風なら現代でも可能だろうが問題は心の再現、鍵はアーカイブ社のテクノロジー、生前、ジョージは妻の感性をアーカイブ社のシステムに書き込んでいたらしい。ジョージはそれをハッキングして自分のアンドロイドに移植しようとするのだが話はなかなか進まない。
ボディーの方も足が付くのは幕開けから1時間6分も後のこと。それまで謎のシステム障害やプロトタイプのロボットの人間臭い振る舞いでつないでいる。2号機は子供程度の知能だそうだが求愛感情や入水自殺など痛ましい、見るからに無骨な機械にしか思えないロボットの方に感情を揺さぶられるとは思ってもみなかった。
ギャビン・ロザリー監督は2台のパソコンを持っていたが一台が突然故障、その時古いPCが嫉妬して自殺したのではないかとのおかしな感情を抱いたことが斬新な視点の原点だったようです。
ジョージとジュールは何度かビデオ電話で会話、アーカイブ社は死者の記憶や感情をVRで再現する新手の心霊墓所事業のようだが実体をぼかしていてミステリアスに仕立てている。
ポスターにSFスリラーとありますが愛と喪失のメロドラマ、謎の飛行物体の襲来とかありましたが特に攻撃も無く突然姿を消してしまうので、何だったのか狐につままれた様。
舞台は山梨の秘境と言っていたがハンガリーで撮ったらしい、ところどころ出てくる文字や料理店は確かに日本風、日本を引き合いにしたのはこの種の映画のマニアの多い市場性なのか、ギャビン・ロザリー監督が子供の頃、和製ロボットアニメなどで親しんでいたある種のリスペクトかもしれませんね。
最後になってとんでもないどんでん返し、事故で死んでいたのは夫のジョージであり、ジュールは生き残り、現実世界で娘を育てている、アーカイブ社と契約が終了しジュールと娘は去って行きました。ということは今まで熱心に観ていたのはアーカイブ社の手の込んだ仮想現実の物語とは、騙すのにもほどがあろうと、作家性の強さに怒りさえ覚えてしまいました、とほほ。当初の筋書き通りだったら今頃ジョージは娘のアンドロイドを造っていたでしょうね。
依然、ジュールと娘の方がVRだと思い、死んでいたのはジョージの方だったと言うどんでん返しに気付かずにレビュー、Tetsuさんのコメントで気づかされました。まさに騙された・・・。そこで再鑑賞して書き直しました。
