「選ばれることが幸福の全てか」Eggs 選ばれたい私たち おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
選ばれることが幸福の全てか
全ての夫婦が卵子ドナー制度を利用できるわけではない。
海外での出産に伴う生活費やエージェントに支払う手数料、提供者への報酬。さらには、受胎オペレーションのために時間を用意できる余裕も必要だ。
そのコストに堪える経済力のある夫婦は限られている。
妊娠治療の発展は、子を持ちたいという欲望の実現に寄与した一方で、新たな格差または搾取の形態を世に生み出したと言える。
自ら選択して、女性に生まれたわけではない。
わたしの思いとは別の何かー他者の妊娠や世間一般の常識などーが、子を産んで育てることへのわたしの躊躇を押し流そうとする。
女性に生まれたからには子を産むべきなのか。
母親となった彼女に比べてわたしは損をしているのか。
繊細でありつつも強靭な圧力がもたらす不安が、卵子ドナー制度を成り立たせている。
そして、選ばれないことでさらに傷つく。
すでに妊娠に至った後でも、母親となることへの覚悟ができるとは限らない。
出産して子を育てる過程の中で、母親となることを自ら選び択る機会が得られるものなのだろう。
誰かに選ばれることは至上の幸福であるとは思う。
それでもわたしの人生はただ一つ、わたしだけのものだ。
そしてそれは、自らの思いを積み重ねて選び択るべきものなのだ。。
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