フィールズ・グッド・マンのレビュー・感想・評価
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カエルのPEPEに降りかかった苦悩と一筋の光。
現代社会が持つ光と影を鋭く突き付けるドキュメンタリーだ。これは決して高い垣根の向こう側の事例ではなく、この時代に生きる誰もが即座に関わりを持つかもしれない話。そもそも強固な連携によって「カエルのペペ」をカルト的人気を誇るキャラへ飛翔させたのもネットの力ならば、そこから一転、作者の意図とは全くかけ離れた”ヘイトシンボル”へ変貌させたのもネットの力だ。そしてペペがもはや制御不能となって増殖していく一方、本作の基軸となるのは、血の通った人間である作者、マット・フューリーの個性だろう。おおらかで柔らかな印象を持つ彼はいつも陽気に微笑んでいる。この曖昧な態度が事態を悪化させたとも本編中では指摘されるが、しかしそんな彼だからこそ皆から愛されるキャラを生み出せたのも事実。ペペとマットがこの先どんな運命を歩むのか見当もつかないが、ラストに示される”希望の胎動”が何よりの救いに思えたのは私だけでないはずだ。
日本のネット事情も連想してしまう空恐ろしさ
差別主義者の象徴となってしまったカエルのキャラクター「ぺぺ」。ぺぺを作り出したマンガ家が辿った軌跡を伝えるドキュメンタリー映画。
ぺぺが色んな人に使われていくきっかけがネットの掲示板で、徐々に差別主義者たちに悪用されていく過程は初めて知った。日本の2ちゃんのようであり、「モナー」を連想してしまった。あれもネトウヨに悪用されたりしてたことを思い出す。
リア充への嫉妬・悪意、陰キャ・童貞・ニートたちの劣等感、「祭り」を待望する退屈感…、出演している「4チャンネラー」たちの言ってることも、日本の2ちゃん(今は5ちゃんか…)で語られていることにそっくりでビックリした。負の感情がヘイトにつながるってことを目の当たりにした感じだ。
ただ、希望がないわけではない。ぺぺが香港の若者たちの間で民主化を象徴するキャラクターになっているということは驚いた。ドキュメンタリー映画としては出来過ぎな結末だろう。
それにしても改めて思うのは、トランプが大統領になったことはアメリカだけでなく世界的にも重大な危機だったんじゃないかということ。SNSを含むネットの負の力が世の中を悪く変えてしまう恐ろしさを感じた映画だった。
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