「ヘイリー・ベネットの多層的な演技に惹き込まれる」Swallow スワロウ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ヘイリー・ベネットの多層的な演技に惹き込まれる
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あまりにも主体性がないまま、裕福な家の主婦を続けている若い女性。彼女の日常への無意識の抵抗がとてもシュールな形で描かれていて、序盤は自我の薄さにまんまとイライラさせられる。しかし、いつしかいびつな抵抗は理由がつかめないまま切実さを増していく。そして最後には、なんとも痛快な女性のエンパワメントの映画であったことに気付かされるのだ。
精緻なスタッフワークに唸らされる映画だが、主演のヘイリー・ベネットが製作葬式も務めていて、いわば作りたい映画、演じたい役のために奔走したと言っていいのではないか。まさに映画における女性の描き方が問われている、今の時代に生まれるべくして生まれた野心的な企画。また、普通なら憎まれ役になりそうな義理の両親が、ちゃんと多層的な人物として描かれているのがいい。
近年、ヘイリー・ベネットは研ぎ澄ましたような演技を披露することが増えているが、本作は現時点での彼女の代表作になることは間違いなく、今後、彼女の名前がクレジットされているだけで要注目。今後の未来を占う道標のような映画になるかも知れないと思うほど、特異でありつつ王道な名作だと思っている。
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