「二重三重の意味が込められているのかも。」Swallow スワロウ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
二重三重の意味が込められているのかも。
今年2本目(通算69本目)になります。
お話の内容については多くの方(PROの方含む)が書かれていることと重複しますし、この映画自体がかなりセンシティブな内容を含むこと、またレーティング上もR15に該当しますので、ネタバレありにしようがどうしようが不特定多数が見る中でよろしくないので(興味本位に見るのは偏った理解を促すし(この点では、興味本位で見に行くのはあまりよくない)、日本でも似たような類型の病理に対する理解はまだまだ)、それらは省略します。
他の方が書かれている通りです。
※ R15指定されたのは、グロテスクな表現が多少なりともあることであり、「大人の営み」の表現があることではないと思います(それも一応はありますが、それ「のみ」でいえば、G指定かせいぜいR12指定の範囲)。
あえて言えば、出産・中絶に関する考え方が宗教観・道徳観の違いで根本から日本と違う点があることを理解しないと発言の意図がわかりにくいという点でしょうか。ただ、それとて今とでは色々な映画がありますし、30年前でもあるまいし得ようと思えば色々な情報をすぐに得ることができます。日本の義務教育(便宜上、高校も含む)で習うことでもあり、それらは常識的な範疇に含まれるのでしょう。
さて、個人的に考察したところ。
「飲み込む」という意味の単語は swallow が確かに思い浮かびますが、それだけではありません。中学英語で習う範囲のもっと平易な単語もありますし、この単語自体も「そう日常会話で使うか?」というとそうでもないでしょう(アメリカの病院など、薬を服用する・させるような場所等は除く)。
そこで英和辞典で調べてみますと、主に
・ (何に限らず)飲食物などを服用する ※ 通常は「薬を」服用する、の用法
・ (屈辱・感情などを)抑え込む/我慢する
・ (前に述べたこと・行動を)取り消す ※ 別の言動を取ることを意味する
…という3つの意味が挙げられます(他、名詞用法として「ツバメ」の意味もありますが…さて、ツバメって出てましたっけ?)。
1つめはこの映画のタイトルと内容そのもの。2つめもネタバレにならない範囲。3つめは…。もしこの意味まで含んで「三重に」意味を持たせたのであれば、それはすごいことだろうな…と思いました(詳細はネタバレになるので省略(他の方のレビューにヒントあり)。そこまでの意図があるかは不明。ただ、日本と違い、英語圏では英語は国語のように扱うので、そうあっても何ら不思議でない)。
※ 映画って「ここで終わりかな?」と思っても思わぬどんでん返しがあったり、なかなか終わらなかったり、意外な方向にいったりしますよね。これ以上はネタバレになりそうなのでカット。
なお、「異食症」という語「そのもの」「のみ」を示す語は allotriophagy という語があります(ありますが、日常会話どころかどこで習うのレベルの専門用語でしょうね…)。
とはいえども、日本ではまだ理解の進んでいないこうした類型の患者さんに対する理解にこの映画が一役立てば、とは思いました(なので、R15指定ですが、日本に限らずどこでも理解度は高くはないと思われる現状、表現を緩和して(日本の)GかR12相当に持っていったほうが良かったのかな…とは思ったものの、そこは作者の表現の自由の範疇でしょうし、日本でのみそういう事情をあることをもって全部作り変えることもできないのは明らか)。
減点対象は下記の0.1のみですが、軽微な範囲なので5.0まで切り上げています。
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(減点0.1) 多少の文法ミスが気になりました。どうしてもこうした内容を扱う以上、自身では解決できず、他人の助けを必要とする疾患ですが、動詞 help は原形不定詞を伴う場合は「直接手助けすること」、to不定詞の場合は「間接的に手助けさせること(=自身以外の誰かの力を借りること)」でれっきとした使いわけがあります(ただ、現在はこの違いは英語圏でもあまり意識されない)。
この使い方がバラバラであり(両方使われているが、一貫性がない)理解しにくいのが気になりました(「性質上」、ストーリーの内容にもかなりかかわってくるため。アクション映画の話とは事情が異なる)。
ただ、この問題は他の語法の問題とは違い、日本では「ら抜き表現」に近いほど「使い分けるべきとするが、意図的に意味を理解を妨げない限りどちらでもOK」な扱いで、許容範囲かな、とは思います。
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