「女性差別を告発する映画ではない」スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
女性差別を告発する映画ではない
その優劣という意味ではなく、純粋に体力の強弱という観点で「女性には危険な現場」という認識を持つことが果たして差別なのか。
肉体的な性差は現実として存在する。
その上で、少なくともこの「スタント」という肉体有りきの業界を取り上げて性差別を論ずるのは難しい気もする。
もちろんこのドキュメンタリーはそれで話を終えることなく、そんな中で女性スタントという地位を切り開いた先人達と、現代なりのスタントウーマンとしての存在を見出そうと努力する女性たちの姿を描いている。
そしてそこで示されるのは、「男女平等」というより「適材適所」。与えられた現場でいかにその役目を忠実に全うするか。
スタントという仕事においてもまさにそここそが重要なんだろう。
ことさらに「女性差別」に異議を唱える映画ではなく、スタントという足場からどうやって自らを磨き、その力を発揮するか。
「大事なことは、相手を怒らせてでも優先する。そのかわり、後で『優先すべきことがあったから』って謝るの。」って、男女関係なく現代においてすごく大事な人間関係論でありビジネス論だし。
ただ。
懐かしい名作の映像や、過去作の目を見張るシーンは多いものの、やっぱり映画としての小粒感は否めない。
あと、ほぼ全員裏方さんなので、短く表示されるその肩書や過去作を知らないとビンと来ない部分も多く(そこは日本語テロップが表示されない)、日本語字幕と英語テロップとスクリーンの映像を追いかけていくのは結構大変。できればインタビュー部分は吹替で聞けたらもっと良かったかな。
結論として、テレビのドキュメンタリーとしては十分だが、劇場に赴いて観るほどの価値は正直なところ見い出せなかった。
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