いつか、どこかでのレビュー・感想・評価
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四つの言語と三つの共和国
アデラ・ソーはこれがデビュー作。ミニスカート姿が可愛い。脚線美に惹かれる。いつまでも見ていたい。そもそもバックパッカーでありながら、小さなスーツケースを引き摺り歩く。どこにあれだけの衣装が入っていたのか、不思議だが、そこはそれ映画だから、目をつむろう。
バルカン半島の3ヶ国を巡るロードムービー。決して自分探しの旅ではありません。
ヒロイン・アデラは、9歳の時、1999年にマカオ返還があった。ということは、まもなく30歳。20代のJDに見えるけれども。
クロアチアの首都ザグレブの「別れの美術館」を訪れる。2年前に死んだ恋人のスマホを寄贈し、それを見に来た。SNSで知り合ったアレックスからメールが届く。「ベオグラードに来たら僕が案内するよ」と。最終バスに乗り遅れ、乗り合いタクシーでボスニアに向かう。しかし、アレックスは現れない。
ベオグラードにしばらく滞在する中で、いろんな出会いがある。とりわけカタリーナとの出会いがキー。彼女はガールフレンドの女優と別れ、アデラと一緒に、母親に会いにモンテネグロへ。彼女はロシア生まれ。母親がソ連崩壊の1991年に、モンテネグロに。海のきれいな国にあこがれて。しかし、同年ユーゴスラビア紛争が始まる。
コトル湾は上から見ると美しい。私も上った、城壁のある坂道を二人は上る。夜景が美しい。夜のパーティーに疲れてベッドにバタンキュー。カタリーナがツインベッドを一つに寄せる。アデラは目が覚めると、隣に彼女が寝ていてびっくりするが、アデラの方から彼女に抱き付いて行く。ごく自然な流れの中で、二人は抱き合う。好きなシーンだ。
アレックスからメールが届く。一人列車でベオグラードに戻る。しかし、待ち合わせの場所に現れたのは、JDのタマラ。アデラを病院へ連れて行く。2年前からアレックスは寝たきり状態。(そもそも観光案内など出来る体でなかったのだ)アレックスは、ボスニア内戦時「1999年NATOの空爆で両親を亡くし、私を引き取って育ててくれたの」とタマラが説明する。
ラストシーン、ザグレブで日本人家族に勧められたクルカの滝のある湖で、アデラは泳ぐ。てっきり、一昨年行ったプリトヴィツェ湖群と思ったが、違う海岸のようだ。
滝の水が流れるように、彼女は流されるのではなく、自ら流れて生きていくのであろう。
登場人物は、みな「故郷喪失」の悲しみを乗り越えて、今という瞬間を前向きに楽しみながら、あるいは、歴史の重圧に流されることなく、ひたむきに生きている、実存している。
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