「大統領閣下のお気に入り」KCIA 南山の部長たち TSさんの映画レビュー(感想・評価)
大統領閣下のお気に入り
韓国映画強化月間、第3弾は「KCIA 南山の部長たち」!
韓国映画に疎い私でも、ご存知!イ・ビョンホン。かの名作JSAはリアルタイムで劇場で観ましたから。
自分の好きな政治もの、情報機関ものなので、評価が甘めになっている可能性大ですが、予想に反して、国家の陰謀とかそういう大それた話ではありませんでした。韓国の歴史を知らなかっただけですけど・・・。
ワシントンでのアメリカ議会の公聴会、パリでの工作活動など、政治もの、情報機関もののエッセンスは入れつつも、ほとんど3人の男の心理戦というか愛憎劇というか。
「大統領閣下のお気に入り」になれるかどうかが出世と生死を分けるという非常に狭い世界の話。
KCIAのキム部長の凶行は、国家国民を思ってのことですか?苦悩するヒーローのような描かれ方をしていて、イ・ビョンホン贔屓だとそう見えてしまうかもですが、どうもそんな深遠なお考えと冷静な判断で閣下を暗殺したようには思えません。
ほとんど、感情的、発作的な犯行でしょう。彼は閣下の暴走を止めたかった。あの頃の閣下に戻って欲しかった。自分の話を聞いて欲しかった。歪んだ愛情なのかもしれません。
情報機関のトップとしてのキリッとした表情と出で立ち。打ち震える感情が表に出てくるのを必死で堪える苦悶と緊張の表情・・・。イ・ビョンホンの演技が堪りません。
情報機関員らしくスマートに仕留めず、拳銃の弾切れとか、血糊で滑るシーンを入れてくるあたり、彼の発作的凶行と動揺ぶりの生々しさが伝わってきて、演出にも唸ります。
しかし、私はやはり目がおかしくなったのかもしれません。
「密輸 1970」でも同様の現象に陥って困ったのですが、イ・ビョンホンがずっと遠藤憲一に見えました!
こうして評価の高い韓国映画を観ると、どうしても邦画と比べてしまって彼我の実力差というか、政治でも何でも恐れず描く映画界の度量の差というものを見せつけられる気がします。日本の映画界は、何か恐れているのか?忖度しているのか?
いつか日本でもこのような権力の「暗部」に真正面から切り込む映画を観たいと願います。大衆ウケしなくてもいいから!