劇場公開日 2020年12月18日

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「声優は若い役も演じる」声優夫婦の甘くない生活 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0声優は若い役も演じる

2020年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

俳優は大抵自分の年齢相応の役柄を演じる事が多い。子役は子供を演じるし、20代の若手俳優はその年齢に見合った役を演じ、年をとれば老人の役をやる。しかし、俳優の中でも声優だけは少し事情が異なる。40代や50代のベテランが子供の演じることだってある。本作はその声優特有の事情を見事に活用している。
イスラエルに移民をしてきたスター声優だった夫婦は仕事にありつけない。妻はそこでテレフォンセックスのバイトにありつく。初老といっていい年齢の彼女だが、さすがプロの声優である、22歳の女を演じきってみせる。夫の方は、海賊版ビデオの吹替という裏家業に手を出す。22歳の女を演じることで心まで若返っているように見える妻が印象的だ。演じるというのは、装うということではないのだ。
クライマックスに訪れるイスラエルの現実が、まるで映画のようだ。ガスマスクが配布される日常の非日常感。事実は小説より奇なりだ。フェリーニ作品をはじめとして名作への愛の表明も見逃せない。

杉本穂高