林檎とポラロイドのレビュー・感想・評価
全59件中、1~20件目を表示
自分を作っているものは記憶の集積なのか?
ケイト・ブランシェットが惚れ込んだというギリシャ人監督のデビュー作。まるで疫病のように突然記憶喪失になる病が流行する世界。ひとりの男が保護され、身元不明の記憶喪失者として、自分の人生をやり直すプロジェクトに参加する。自転車に乗る、ハメを外して踊る、高いところから飛び降りる、などなど、次々と課せられるミッションは時に奇妙に映るが、人生なんて筋が通ったものではなく、果たして自分の人生はなにをもって定義されているんだろうかと、根源的な疑問が湧いてくる。しかし、次第にこの物語が描く本筋はそこではないと気付かされる語り口の鮮やかさ。思い返せばヒントはあちらこちらにあったのにと、気持ちよく作り手に転がされる。そして、それでもなお、自分に置き換えることのできる普遍的な悲しみを描いていたこの作品を、好きにならずにいられないのである。
ギリシアから届いた不思議な肌触りの物語
ギリシアから不思議な肌触りの映画が届いた。鑑賞中はどこか飄々としたトーンで物語が展開し、その語り口に思わず口元が緩んでしまう人も多いだろう。ただし、本作の描く状況は極めて特殊なものだ。舞台となるのは、記憶を失う奇病が蔓延する世界。日々多くの患者が身元不明となって保護され、記憶が戻らない人のために新たな生活をスタートさせるための訓練プログラムさえ用意されている。主人公のヒゲモジャな中年男性もまた突如として記憶喪失を発症し、このプログラムを受講することになるのだが・・・。序盤では、記憶を失った者たちが人との距離感や関係性の構築を学んでステップアップしていく姿に主軸が置かれているように思えるのだが、最後まで見通すと印象が大きく変わる。あまり説明的な描写がなく、サイレント映画のように動作だけで理解しうる場面が多いのも特徴的。これが長篇デビューとなるニク監督がいかにキャリアを築いていくのか楽しみだ。
バットマンとキャットウーマン
色んなミッションを受けてみたいような気がしてきました。多分、特定疾患療養か何かで公的資金が使われてるんだと思うし、それなら金を気にせずバーやストリップなど平気で行ける。さすがに危険なミッションは難しいかもしれないけど、楽しいことが多そう。それにしても、バットマンをキャットウーマンが無視するとは・・・敵だと思ったのか?(主人公は宇宙飛行士)
オープンリールデッキやカセットテープ。どことなくアナログ感につつまれて時代がいつのものか知りたくなった。現代だとポラロイドカメラじゃなくデジカメかスマホだよね。その時代設定を想像しながら鑑賞しましたが、ホラー映画は『悪魔のいけにえ』リバイバルだったし、『タイタニック』の会話があったことから20世紀末なのだろうか。音楽は古さを感じたからなぁ・・・
記憶喪失という奇病が蔓延する世界。記憶が戻った人はいないというから、主人公は奇跡的に回復したということか。しかし、せっかく忘れようとしていた喪失感をまた思い出してしまったのはハッピーエンドとは言い難い。現実世界と比較してみると認知症がそれにあたるのかもしれませんね。
リンゴを4、5個食べたら下痢も治る。の前にそんなに食べられない。
上書き保存できません
L知っているか、記憶喪失の男は林檎しか食べない
企画倒れ
ちょっと淡々としすぎてて集中して見ないと色々見落としてしまう話だっ...
スタイリッシュ
知恵の実
思考に浸れる映画。
巧い。だがツマラン。
続出する記憶喪失者に新たな人生を作るプログラム。 おもしろいテーマ...
悲しみを受け入れるまでの物語
作品は、主人公が自分の頭を壁にごつごつとぶつける音で始まり、何があったのか分からないまま話は進んでいく。
舞台はどこか分からないが、スマホやパソコン等はなく、カセットテープやポラロイドカメラ、郵便等、アナログ主体の世界。記憶をなくす人が大量発生し、主人公も記憶喪失の身元不明者として入院する。しかし治療の成果はなく、記憶を取り戻すことを諦め、新たな人生を生きるためのプログラムを受ける。
まず気がつくのは、通常より横幅が狭い画面。中心に主体を置き、そこに向かって一点透視図法の線が入る印象深い構図。そして深い紺色を基調にした色調。この色調は、主人公の心境の変化に従って、赤みを帯び、最後は光を帯びた白になる。まるで朝へと変化する空の色。
主人公の考えていることは言葉にされることはなく、表情も乏しい。しかし、終盤に余命幾ばくのない老人と話し、彼の奥さんが記憶喪失になっていると聴いた主人公がいった言葉、「奥さんは、これ以上あなたを忘れることがなく幸せだ」。この言葉で、その後のシーンと、冒頭のシーンが全て腑に落ちた。
観終わった後の余韻がとても良い作品だった。
林檎のちょっと酸っぱい感覚が伝わるその確かな存在感
人は、これ以上ないと思える悲しみに襲われた時、すべてを忘れてしいたいと、思うのかもしれない。その心を、少し屈折した形で表現すると、こんな映画になるのでしょうか。
非現実的な世界観に、安部公房の小説やカフカの『変身』を思い浮かべていました。彼が陥れられた現実は、不条理そのものなのでしょう。そういえば、固有の人名は誰一人として出てこなかったように思います。
ただ、重い雰囲気はなく、ちょっとシュールなユーモアは、楽しめる人には楽しめるのでしょう。それに、もの静かで端正なたたずまいの空気感、美しく統一感のある色調の映像。何とも魅力的です。
切れそうになる現実との接点を、林檎がかろうじてつないでくれる。時間をかけて、アンナを喪失した現実を受け入れる。そして、深い悲しみや諦念とともに、傷んだ林檎をひとりほおばる。
無音のエンドロールの時間も心にしみてくるようで、監督の繊細な心遣いが感じられました。
記憶喪失が蔓延する世界で…
記憶喪失が蔓延する世界、リンゴが好きなこと以外の記憶をなくした男が[記憶回復プログラム]で次々と与えられるミッションを行っていくのだが……という記憶喪失もの。
しかし、観終わってもスッキリはしない…(^^;
確かに、ホラー映画を観るミッションで知り合った同じ境遇の女性との恋愛ものにも見えるが、その愛をはっきり女性に伝わったか…というと微妙。
奇妙な映画を観ながら、「これは何か凄い結末が待っているのか?」などと期待しすぎたかも知れない。
一回ぐらい観ても良いかも知れないが、オススメできる映画には見えなかった。
全59件中、1~20件目を表示